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県の観光事業者サポート事業に多数の不正申請 採択340件のうち50件超で実態確認できず


県の観光事業者サポート事業に多数の不正申請 採択340件のうち50件超で実態確認できず 沖縄県庁
この記事を書いた人 琉球新報社

 コロナ禍や物価高騰の影響を受けた観光事業者の支援を目的とした、沖縄県の「観光事業者継続経営サポート事業」で、事業の実態が確認できないなど不正が疑われる申請が相次いでいる。事業採択された340事業者のうち、不正な申請とみられるものが50件以上に上っていることが1日までに関係者への取材で分かった。

 同事業は22年度から2年間に実施される事業で、総事業費は約10億4千万円。正規職員の新規採用にかかる人件費や採用経費、集客のイベントの実施を伴う広報・プロモーションなどが補助対象。補助金額は600万円を上限に、従業員規模に応じて決まる。

 関係者によると、申請通りに事業が実施されていないことや、実在しないウェブサイト、バスツアーなどが申請される事例などがあった。

 県は事業者ごとに実態調査を進めており、確認ができた事業者から順に支払いの手続きを進めている。22年度分は、528件の応募から340事業者を採択した。そのうち交付決定をしたのは96件。県観光政策課の担当者は「交付を保留にしている事業者の中には事務手続きが遅れているだけのものもあり、残りの全てに不正が疑われるわけではない」としている。

 県によると、実施事業や支払いなどで事実と異なる内容の書類を偽造し、公金を搾取しようしただけで詐欺罪に問われる。補助金の支払いを受けなくても、虚偽の申請を行うだけで不正受給となる。

 県はホームページで、不正受給が明らかになった事業主に対し「交付決定の取消を行い、既に補助金が交付されている場合は返還を求める」と注意を促している。

 県内の経済動向などを調査するりゅうぎん総合研究所の武田智夫常務は「コロナ禍で観光客数が3分の1に減少するなど、観光事業者は大きな痛手を受けた」と指摘。「不正申請は許されることではないが、それくらい厳しい状況に置かれていたとも捉えられる」と分析した。

 県は「事務局や県が書面や実地検査を行っている。各案件ごとに精査し、不正受給につながらないように対応していく」と話した。

(與那覇智早)