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【深掘り】沖縄の修学旅行バス、「手配できない」今シーズン深刻化の恐れ 運転手不足解消の鍵は?


【深掘り】沖縄の修学旅行バス、「手配できない」今シーズン深刻化の恐れ 運転手不足解消の鍵は? 県外からバス運転手を誘致し、修学旅行バス不足問題を乗り切った県内バス事業者の観光バス=28日、豊見城市(提供)
この記事を書いた人 Avatar photo 與那覇 智早

 県内のバス運転手不足によって、2023年10~12月の修学旅行繁忙期に修学旅行バスの手配ができないとの懸念が広がっていたが、本年度はバスの未手配が発生しなかった。

 事業者の垣根を越えた調整や、県の補助金を活用した人材誘致などで難を逃れた格好だ。だが、バス会社関係者によると、人手不足の問題は解消されておらず、24年の同時期は現段階で4千台以上が未手配だという。今年は運転手の時間外労働に上限を課す「2024年問題」も重なり、未手配がさらに深刻化する恐れがある。


 沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB)の下地芳郎会長は「早めに情報共有をするなど各社での連携を強化し、問題解決に向けた早急な対応が求められている」とするが、人手不足の抜本的な解決策は見いだせていない。あるバス関係者は「現状、バス運転手はアルバイトとして採用ができないが、副業として休みを利用してバスの運転ができるような法整備や、学生の時からバス運転手に興味を持ってもらうような取り組みが有効だ」と提唱する。

「補助金の効果」

 「昨年は特に大変で、バス会社などが協力し合いようやく『なんとかした』のが実情だ」。バス会社関係者の一人は青息吐息だ。

 バス会社などによると、運転手不足の背景には、高齢化やコロナ下での離職が増えたことなどがある。関係者は「バスの車両はあるので、県内でバス運転手を確保できれば一番良いが、すぐにどうにかなることではない」と漏らす。

 人材不足の解消につなげようと県は23年9月、バス運転手・ガイドの誘致に特化した予算を計上した。同年10月1日~12月31日の修学旅行を受け入れる貸し切りバス事業者を対象に、県外からの人材確保のために4千万円を確保した。

 予算は運転手とガイドの計100人分。通常は旅費と滞在費、研修費用などで1人当たり50万円がかかるが、その8割の40万円を上限とした。
県観光振興課によると、8事業者が補助金を利用し、北海道などから運転手26人、ガイド24人の計50人の採用が実現した。担当者は「補助金の効果だ。来年度以降も予算が確保できるか検討する」と手応えを示した。

垣根を越え

 県内バス各社はこれまで、シェア拡大のために熾烈(しれつ)な競争を繰り広げてきた。だが、修学旅行生の受け入れが見通せない事態に陥ったことで、会社の垣根を越えた調整を余儀なくされた。
 関係者によると、昨年は修学旅行生の観光地への送迎を別々の会社が実施するなど会社間の連携が数多くあった。バス会社での全体調整会議を約4回開いたほか、旅行社がバス会社に出向き、運行日程を調整した。

 OCVBは24年度に向け、早期に予約状況や稼働可能なバス台数などを確認し、県やバス会社、旅行会社などと連携を図るほか、必要な対策を協議する合同会議を開催する方針。また、バス予約の重複や手配漏れをなくすため、旅行主催者や旅行会社に対し、3カ月前には旅行日程を確定するよう協力を呼びかける。


 那覇バス交通では23年12月から、県内の芸人をバスガイドとして起用するなど、話題性のある取り組みで人手不足の解消を図る。県バス協会の山城克己会長は「県からの補助金がなければ人材の誘致ができなかった事業者も多かった。今年は24年問題への不安もあるが、各社で連携を密にして乗り切りたい」と話した。 

(與那覇智早)