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ママの宣言 働き方の選択肢は無限大 翁長由佳(サンダーバード代表取締役) <女性たち発・うちなー語らな>


ママの宣言 働き方の選択肢は無限大 翁長由佳(サンダーバード代表取締役) <女性たち発・うちなー語らな> 翁長由佳
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 娘のスマホに「2017年8月27日ママの宣言」という音声がある。何がきっかけでこれを録音したのか全く覚えていない。当時47歳の私が「ママは、5年以内に自分の夢をかなえます。観光危機管理の指導者になって、観光客に寄り添った観光地づくりができるように頑張ります」と言っているものだ。

 当時は娘がアメリカ留学を決意した頃で、互いの想いや夢を夜中まで語り合っていた。娘が自分の夢を宣言したあとに、私にも同じ質問をして録音したのだろう。仕事に行き詰まった時、心が折れそうになった時、私はこの宣言を思い出し、自分が夢の実現に歩みを進めていることを確認している。

 49歳の時、沖縄観光コンベンションビューローを退職した。人によっては、安定したキャリアをあっさりと捨てたように見えたかもしれない。あれから5年。確かに、日々の生活もままならず、次から次へとくる支払いに頭を抱えることも多いが、あの時の自分の決断に微塵(みじん)の後悔もない。もしも100万回生まれ変わったとしても、私は同じ道を選択するだろう。ずっと支えてくれている家族や友達、新しく出会った仲間たち、防災や観光危機管理がお金にならないという仕組みを変えていくことも含めて、少しずつ、私たちはこの分野の新しいカタチに挑戦を続けている。

 ひとつの職場に長く務めることも、自分自身のステップアップや心身の幸せを確保するために次から次へと職場を変えることも、私みたいに50の手前で新しい世界に無謀に挑戦することも、世の中の働き方のスタイルは無限大に選択肢がある。どんな経験も、出会いも、これから生きていくうえでの大きな糧や、自分自身を奮い立たせる原動力になる。ムダなものなんてひとつもない。挫折して負った傷も、振り返りたくない過去も、すべては今の自分のチカラになり、他者への理解につながる。

 幸せの物差しは人それぞれで、私の選択を愚かだと思う人もいるだろう。私自身は観光危機管理や防災という未来の沖縄や県民、観光客の命を守る取り組みができることを心から幸せに感じている。危機が発生した際に「これどうしたらいい?」「こう進めるけど、それでいい?」とクライアントから連絡をいただくことも増えてきた。これからも誰よりも近い距離で、寄り添いながら支える存在になりたいと思う。

 「私は幸せ?」と、自分自身に問いかけてみよう。その答えを持っているのはひとりしかいない。

翁長由佳 おなが・ゆか

 1970年生まれ、那覇市出身。大学卒業後、沖縄観光コンベンションビューローで26年間従事。2019年6月に県内初の観光危機管理に特化した「株式会社サンダーバード」を立ち上げ、危機に強い観光地の確立を目指し日々取り組んでいる。