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経験積み磨いた技芸光る 沖芸大琉球芸能専攻OB会20周年公演


経験積み磨いた技芸光る 沖芸大琉球芸能専攻OB会20周年公演 組踊「十六夜朝顔」で十六夜に咲く朝顔を探す友利大主(右・神谷武史)と妻の乙樽(中央・新垣悟)、息子の虎千代(左・佐辺良和)=4日、浦添市の国立劇場おきなわ
この記事を書いた人 Avatar photo 田吹 遥子

 沖芸大琉球芸能専攻OB会の創立20周年記念公演「だんじゅかりゆし」が3、4の両日、浦添市の国立劇場おきなわで開かれた。3日は「組踊版ももたろう」や琉球舞踊などを解説付きで紹介。4日は創作舞踊や新作組踊「十六夜(いざよい)朝顔」を上演し、古典芸能の普及と発展を担う同会の役割を存分に発揮した。(田吹遥子)

新作組踊「十六夜朝顔」 16年前初演と同じ配役

 4日の「十六夜朝顔」は、嘉数道彦脚本演出。2012年以来の上演で、主要キャストは08年の初演と同じ配役にした。

 友利大主(神谷武史)と重い病にかかった妻の乙樽(新垣悟)は田舎暮らしの日々。中国に留学中の息子・虎千代(佐辺良和)の帰りを楽しみに待っていたが、息子は盗賊としてお尋ね者になっていた。友利大主は、耕作当マチャー(嘉数道彦)とカマド(阿嘉修)夫婦の協力もあり、虎千代を赤崎の比屋(川満香多)から救い出す。カマドが赤崎の比屋に自らの赤子を抱っこさせている間に虎千代を逃がす展開や、嘉数と阿嘉の掛け合いが楽しく、顔がほころんだ。

 親子が再会したのは12年に一度、子(ね)年の八月十六夜。この日にのみ咲く朝顔が願いを一つだけかなえると知った3人は朝顔を探し出す。虎千代は乙樽の回復を願おうとするが、乙樽はそれを遮り虎千代の出世を願う。

 去り際に虎千代が1人、朝顔が咲いている場所を見つめるような場面では、佐辺の表情に母の回復を願いたいという強い思いを感じた。母思いの子と、さらに深い愛で子を包む母の思いが涙を誘った。

 初演から16年、名作と名高い作品に、経験を積んで磨かれた出演者の技芸が光った。地謡は、歌三線を新垣俊道、仲村逸夫、玉城和樹、和田信一、箏を池間北斗、笛を横目大哉、胡弓を佐久本純、太鼓を高宮城実人。

創作舞踊「春や春」を披露する出演者ら=4日、浦添市の国立劇場おきなわ
創作舞踊「春や春」を披露する出演者ら=4日、浦添市の国立劇場おきなわ

 同日はこのほか、同専攻で創作された舞踊など5題を披露した。創作舞踊「春や春」は、ピチカートなど琉球箏曲にはない奏法や、ワルツを思わせるリズムが斬新で楽しい。華やかさと勇壮さを備えた舞も合わさり、沖芸大ならではの舞台に圧倒された。

組踊版ももたろう 沖縄風演出で楽しく

 沖芸大琉球芸能専攻OB会の創立20周年記念公演「だんじゅかりゆし」の3日は、浦添市の国立劇場おきなわで「組踊版ももたろう」を披露した。沖縄風にした物語で、組踊を楽しく紹介した。

 ウスメー(岸本隼人)とハーメー(謝名堂奈津)と暮らす桃太郎(嘉数千李)。かぐや姫(福島千枝)や浦島太郎(堀川裕貴)、眠り姫(伊藝武士)、一寸法師(山入端依莉)からキジムナーたちが悪さをしていると聞き、国頭に向かう。

桃太郎(手前中央・嘉数千李)にお供する猿(左・山入端依莉)、琉球犬(中央奥・堀川裕貴)、ヤンバルクイナ(右・伊藝武士)=3日、浦添市の国立劇場おきなわ
桃太郎(手前中央・嘉数千李)にお供する猿(左・山入端依莉)、琉球犬(中央奥・堀川裕貴)、ヤンバルクイナ(右・伊藝武士)=3日、浦添市の国立劇場おきなわ

 ハーメーからもらったサーターアンダギーを道中で出会う琉球犬(堀川)、猿(山入端)、ヤンバルクイナ(伊藝)に分け与えて仲間にしながら、国頭に到着した。飲んだくれて暴れるキジムナーたちを桃太郎が懲らしめた後で、かぐや姫が再び登場。キジムナーが本来はガジュマルの精で「悪さは本心ではない」と説得した。「心を入れ替える」と誓うキジムナーの姿も見て、桃太郎はキジムナーを信じて許す。

 一寸法師の箸が赤と黄の2色を施した「うめーし」など、随所で沖縄風の演出が楽しい。勧善懲悪にしない展開に優しさが伝わった。若手演者の演技も生き生きとしていた。

 組踊に先立って、琉球舞踊や古典音楽を解説付きで紹介した。琉舞の振りである「こねり手」を観客にレクチャーする場面もあり、会場が一体となって盛り上がった。南城市から見に来た呉屋航さん(8)は「桃太郎に出たヤンバルクイナが面白かった」と感想を語った。