昨年11月に鹿児島県・屋久島沖で米空軍横田基地所属の垂直離着陸輸送機CV22オスプレイが墜落した事故について、米空軍は2日、事故調査報告書を公表した。機体左側の「ギアボックス」(変速装置)内で特定のギアが破断したことで事故につながったと分析する一方、破断の根本的な原因を特定することはできなかった。普天間飛行場所属で県内を飛び交う海兵隊のMV22オスプレイも同じ構造だが、現状では不具合を防ぐ手段はない。
日米両政府は、破断の原因は分かっていないものの、対策を取ることで安全に飛行できるとしてオスプレイの運用を続ける構えだ。安全対策として、不具合の兆候を早くつかめるようにギアボックスの点検・整備を強化することや、不具合発生時により早い段階で近くに着陸するを検討することなどを挙げている。飛行場所も引き続き、緊急時に空港などに着陸できる範囲に限定している。
防衛省は米軍の報告書公表に合わせて日本語で概要版を公表した。報告書によると、機体左側の円筒部分でエンジンの動力を「プロップローター」に伝えるギアボックスに不具合が生じた。ボックス内で高速で回転する「ハイスピード・ピニオンギア」と呼ばれるギアが何らかの原因で破断し、その破片がギア間に挟まったことで別のギアが摩耗した。その結果、エンジンからの動力を伝えられなくなって墜落した。
事故機は当時、別のCV22と共に演習参加中で、山口県の岩国基地から沖縄県の嘉手納基地に向けて飛行していた。離陸約41分後から約69分後までにギアボックス内で金属片の発生を知らせる警告灯が5回表示されたが、操縦士は計画通り嘉手納基地に向かおうとしていた。
離陸から約71分後、金属片を燃焼しきれなかったことを示す別の警告灯が表示されたことを受け、操縦士は任務を中断して屋久島空港への着陸を試みた。だが着陸の直前に高度約240メートルの地点でギアボックスが故障し、機体が左側に2回転して海面に墜落した。
米軍は警告が点灯して着陸が推奨される状況になった後も操縦士が任務を継続して対応が遅れたことや、より近い場所ではなく屋久島空港に着陸しようとしたことも事故原因だと記載している。(明真南斗)