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【インタビュー全文】玉城デニー知事就任2年 3期目への出馬は? 辺野古、自衛隊、子ども施策、沖縄振興を語る


【インタビュー全文】玉城デニー知事就任2年 3期目への出馬は? 辺野古、自衛隊、子ども施策、沖縄振興を語る 2期目の任期折り返しを迎え、インタビューに応じる玉城デニー知事=9月27日、県庁(又吉康秀撮影)
この記事を書いた人 Avatar photo 沖田 有吾

 玉城デニー知事は9月30日、2022年9月の2期目就任から2年となり、任期の折り返しを迎えた。2期目就任2年に合わせて同月27日、琉球新報などとの会見に応じた。玉城知事と報道陣の一問一答を紹介する。

全ての公約、全身全霊で

 ー2期目の就任から30日で2年。公約の達成状況の自己採点は。

 「2期目の公約については、新沖縄21世紀ビジョン基本計画に基づく施策の推進と併せ、1期目の取り組みの中でより進化させていくべき施策を110項目、重要性を増した課題などを踏まえ、特に重要と考えられる施策を重要政策として71項目、位置づけている。全てに全身全霊で今取り組んでいる真っ最中だ」

 「例えば子ども施策について言えば、貧困対策費を増額し、対策を強化したほか、児童相談所の人員の大幅な拡充、子ども施策に関する総合調整機能を持つこども未来部を設置した。今は学校給食の無償化の公約に向けて、第一歩として取り組みを進めていくために調整を進めている」

 「2023年3月の県差別のない社会づくり条例の制定や、アジア・太平洋地域の緊張緩和と信頼醸成の取り組みに向けた平和・地域外交推進課の設置、沖縄県における地域外交の基本方針を取りまとめたことも大きな進歩、前進だと思っている。その他、防災危機管理センターの整備に向けた取り組みや、首里城復旧に向けた取り組みなど、公約で掲げた事項については確実に着実に取り組みを進めていると思っている。現時点での公約達成状況については、県民の皆さまに評価してほしいと考えている。残り2年の任期において公約で掲げた全ての事項に対して、全身全霊で取り組んでいきたい」

 「まさに(任期の)真っ最中で、残りあと2年あるので、この間に国際社会の情勢の変化、アジア太平洋地域のさまざまな環境などの変化、そして災害への対応など、おそらく公約で掲げた以外の重要で優先されるべき取り組みも起こるかもしれない。十分対応する備えを進めつつ、あらゆる状況に対して県民の暮らしの向上、福祉の増進と県政の発展に向けて取り組む。常にアンテナを張って、対応できるように心構えをしておきたい」

給食無償化の進め方

 ー給食費の無償化について、方法論を巡って異論もあった。今後どう進めていくのか。

 「学校給食費の無償化は、私の重要な公約の一つ。学校給食の調査などを基に5月に県の取り組み方針をまず発表した。各市町村からの意見も踏まえ修正を加えて、6月下旬、教育委員会で第1回の市町村への説明会を行った。その後、各市町村に対するアンケートやヒアリングを踏まえ、補助対象経費や上限額などの制度設計について検討し、9月2日に2回目の市町村への説明会を行った。その際に特段反対意見はなかったと聞いているので、市町村もおおむね検討する方向性は一つになっていると思う」

 「現在は県の予算編成に向けて各市町村の2025年度要望額の調査を行っているところで、市町村とさらなる調整を踏まえ、25年の1月までに補助金の交付要綱を策定し、そして同年4月から着実な実施に向けて取り組んでいきたい」

 「今後のさらなる拡充については、まず来年4月からは中学校の給食費の2分の1相当額ということを第一歩として進めていくが、今後、取り組みの検証結果、国の無償化制度に対しての動向などを見ながら取り組んでいきたい」

次回知事選への意向は?

 ー次回知事選は2年後にある。3期目に出馬するつもりがあるのか。

 「私は知事に就任して以来、沖縄における諸問題・諸課題の解決、そして県民生活の向上に取り組んできたと考えている。今後もこれまで同様県民のために、そして県政発展のためにあらゆる課題の解決に向けて、全身全霊で取り組んでいきたい。あと2年、本当にもう全力で心を傾けて、情熱を持ってしっかりやっていきたい」

 ー今の段階では?

 「やっている途中なので、それでやり遂げたと思うのか、それともまだやりきれてないと思うのかはこの2年間、またさらなる環境の変化などにもよると思う」

辺野古新基地建設への対応

 ー辺野古新基地建設問題の展望について。県として再撤回などの新たな展開も考えているか。

 「辺野古新基地建設事業に係る埋め立て承認の撤回の可能性については、国の代執行による埋め立て変更承認処分後において、公有水面埋立法の承認要件に係る新たな事由が発生しているかどうかなど、慎重に検討する必要があると考えている。今後、工事が進む中で新たな事象が発生するなど重大な問題が生じた場合には、関係法令の規定を踏まえつつ、適切に判断していきたい」

 「一方で辺野古新基地建設問題は対話によって解決策を求めていくことが重要であるという考え方には、これまでも、これからも変わりはない。引き続き国に対して対話による解決策を求める。民主主義の姿勢を粘り強く求めていきたい」

 「今後、全国知事会と連携した働きかけによる国の裁定的関与の見直し、これは沖縄県が法の不備、法改正に瑕疵(かし)があるということを明確に、裁判においても指摘したが、引き続きこの裁定的関与の法律上の見直しや、あるいは国連など国際社会への発信、それから問題解決に向けた機運醸成のためのトークキャラバンやシンポジウムの実施など、辺野古のみならず基地負担の軽減に向けて、政府にしっかりと取り組んでもらい負担軽減が図られるよう、全力で取り組んでいきたい」

 ー国際社会への発信を通して、具体的にどうやって辺野古阻止に結びつけていくのか。

 「県内県外に対して発信する情報などに加えて、国際社会に対しても沖縄の基地負担の現状や辺野古新基地建設問題、基地から派生する騒音や水質汚染などの諸問題の解決の必要性は幅広く訴えていく必要性がある。昨年の国連訪問で、国連人権理事会の本会議に出席し、沖縄に米軍基地が集中している現状や県民の平和を希求する思いなどをスピーチした。米軍基地による人権、自治、環境問題をテーマにした講演会や国連関係者との面談もした。沖縄からの問題提起については非常に関心が高いという印象があるし、特に有害物質および廃棄物に関する国連特別報告者のマルコス・オレリャーナ氏については、今年11月に本人の希望もあって沖縄に招く」

 「先日も、実際にフィリピンにおける米軍基地の返還などに取り組んだ当事者の方の話を聞く機会があった。当事者でなければ語り得ない状況や環境などについて、われわれも新しい情報を得る大変重要な機会だと考えている」

 「今年1月、映画監督のオリバー・ストーンさんをはじめとする世界各国の識者400人以上の連名によって、沖縄のさらなる軍事化を拒否する県民への支持と新基地建設中止を訴える声明が発表された。せんだってアメリカで、声明の中心的な役割を果たしたピーター・カズニック教授と話し、私からぜひ辺野古の現場を直接見て、国際社会に向けて正しい情報を発信してほしいとお願いした。カズニック教授からも良い返事を頂いているので、できれば今年度中、もしくは近いうちに招へいが実現できるよう、日程調整などについて意見交換をしていきたい」

 「引き続き、県内外、国際社会における有識者、ジャーナリスト、国連関係者のほか、発信力の高い人物と連携をして、できる限り沖縄へ招へいさせていただいて、県内外および国際社会に対して情報発信を行うとともに、国際社会からの理解と協力を得ることがやはり一番重要な目的となる。沖縄県の問題・課題を解決する後押しを、国際世論でも形成することを目指してこれからも連携を重ねていきたい」

自衛隊配備と沖縄

 ー自衛隊の南西シフトについて。

 「いわゆる安保関連3文書では、厳しい安全保障環境に対応するため南西諸島における自衛隊機能の増強などが示されているが、多くの国民は憲法における専守防衛の考え方が堅持されていると認識しているだろう。他方で、多くの有識者は、安保関連3文書における内容は憲法逸脱の可能性が高いと指摘している」

 「沖縄県としては、日米安保体制や専守防衛のための最低限度の自衛力の保持は理解する立場だ。しかし、米軍基地が集中することに加えて、自衛隊の急激な配備拡張による抑止力の強化がかえって地域における緊張を高め、不測の事態が生ずることはあってはならないと考えている。沖縄が攻撃目標となるような方向性を絶対に避けなければならないということは、多くの県民と私とで考えが一致していると受け止めている」

 「特にその中でも、反撃能力を有する装備の県内への配備が計画される場合には、攻撃対象となるリスクが高まることになることなど、県民の理解は到底得られない。当然、われわれは反対する意思をしっかりと示していきたい。政府は今後の自衛隊配備の予定や検討状況について、事前にしっかりと丁寧な説明を行うこと、そして反撃能力を有する装備については県内に配備を行わないことなど、引き続き、これからも機を見て要請したい」

 ー知事の求める地元への丁寧な説明というのは地元の合意をしっかり得るということか。

 「合意はもちろん、前提となるのは丁寧な説明をしっかりとして、住民の意見を計画に反映させる努力をすることだ。その努力もなしに計画ありき、予算の仕組みありきで物事を進めることで、うるま市石川への訓練場の新設を断念せざるを得なくなった。無理な計画には必ず強い反発が予想される。丁寧な説明と、地元が本当に理解できる範囲での計画となっているかどうかについても、透明性の高い情報提供はやはり大前提になる」

 ー訓練場もそうだが、オスプレイの配備を巡る説明など、どうしても沖縄側の求める説明と政府の事前の説明には、情報の量や内容に違いがある。なぜこんなことになってしまうのか。

 「はっきり申し上げると、どこにそれを受け入れてもらうかということに対して、受け入れ先の当事者が不在であるかのような計画で進めることだ。そういう計画は絶対に、民主主義社会においては到底認められないはずだと、われわれはそういう認識をしている。しかしその認識と著しく乖離(かいり)している計画が、さも日米の合意のみで進められるというようなことがあっては絶対にまかりならんとこれまでにも伝えている。日本政府はそのことを真摯(しんし)に受け止めて、地元の負担軽減についてこそ努力を図ることが重要だ。ましてや自衛隊の基地を配置するのであればでは、米軍基地の過重な負担をどう先に軽減していけるのかということの計画も、しっかりと方向性や期限なども明確に説明をしてもらうということも必要だと考えている」

 「辺野古もそうだが、うるま市の新しい陸自訓練場の計画も、全く地元の理解を得ることもなく説明もなく、ただ予算を計上したから、その土地に新しい訓練場を作るということのみでやろうとした。それは住民の意識とは全く相入れない。著しく乖離しているがために、住民は賛成する余地を持つことができない。反対の声が広がり、防衛大臣も断念せざるを得なくなったという事実。こういう事実があったということを、住民の側に立ってしっかり検証すべきだ」

沖縄振興のこれから

 ー沖縄振興の在り方について。知事は一括計上であったり、高率補助、税制面での優遇措置など、沖縄振興の中心になってきた方式について、いつごろまでこれが続いていくべきと考えるか。

 「一括計上方式については、県庁内でも他府県の予算要求方式も研究しながら、今後どのような形が望ましいのかについては、都度研究を進めていく必要は当然あるだろう。しかしこの計上方式等は、沖縄振興特別措置法の第1条の目的において、沖縄の置かれた特殊な諸事情に鑑み、特別な措置を講ずると規定されている。この特殊な事情について、国は沖縄振興基本方針において、戦後四半世紀余りにわたり、わが国のいわゆる施政権の外にあったことなどの歴史的事情など、四つを示している」

 「この特措法に基づく沖縄振興交付金や高率補助制度などの特別措置は、沖縄が抱える特殊事情から生じる政策課題に対応するために講じられているので、これらの政策課題が解消されるまでの間はやはりこの特措法に基づく特別の措置は継続される必要があると考えている」

 「2032年度以降の次期振興計画については、現在の基本計画の成果指標の達成状況や、新たな課題などに係る検証なども含め、検討していきたい。一括計上方式や特措法による沖縄振興策は、離島の条件不利性の克服や、鉄軌道を含む新たな公共交通システムなどの導入、返還が合意されている嘉手納以南の大規模な駐留軍用地の跡地利用など、沖縄の特殊事情に起因する課題に対応した大規模なプロジェクトがこれからもめじろ押しとなっている。それらプロジェクトを推進するためには、次期振計でも現振計で進めていることの継続性も当然求められると思うので、次期振計についてはまたしっかりと検証を重ねた上で、方向性を見出していきたい」

 ー最近、ハード交付金の減額で市町村から、事業がしづらい、また市町村に回していることで県の事業進捗(しんちょく)が遅れるという声を聞く。基地問題も含め政府との関係性によって増減があるのではないか、政治的なものになっているのではないかという指摘をする人もいる。見直す必要性については。

 「確かにそのような指摘、意見もあることは十分承知をしている。ただ、基地問題と県民と県政の振興のための計画は全く別だと私は考えている。基地問題を解決しつつ、県民の生活の向上、福祉の向上、県政の発展というものはまたしっかりやらなければいけない。基地問題も経済の問題も両方、政府と協力をして、解決すべき共通課題であるという認識で取り組んでいきたい。当然そのためには、3千億円規模の予算要求をしているが、沖縄の市町村を含めた広域的事情にも配慮を払ってもらい、引き続き県側と十分意見交換をさせていただいて、より県の計画や市町村の計画に反映できるような予算を獲得してほしいと期待したい」

「稼ぐ力」、スタートアップエコシステム

 ー経済振興では、今後どのように特色を出していくか。

 「沖縄県が目指す、強くしなやかな自立型経済というのは、やはり県経済の成長エンジンと言われる観光産業、情報通信関連産業の他、いろんな産業を起こしてそれを広げていくことは非常に重要な取り組みだ。例えば新型感染症とか、何らかの外部要因に左右されない足腰の強い経済体制を構築していくことに傾注していくことが重要だ」

 「沖縄はアジアのハブであるという利点を生かし、人、物、情報などの交流や集積をこれまで以上に促進して、域内の産業に高い波及効果をもたらす産業として、さまざまな民間企業の交流促進なども含めていろんなことをつなげていきたい」

 「中でも今、最も言われてることはDXによる稼ぐ力の増進。約99%が中小零細企業の沖縄県にあっては、企業の努力のみで進めていくことは到底厳しいだろうと認識している。国、沖縄県の計画も相まって市町村や民間と協力し、さらなるDXの進展による様々な産業基盤の新たな構築を目指していきたい」

 「スタートアップエコシステムのさらなる体制の構築は、おそらく離島にあっても、海外と事業が展開できる、あるいは域外の交流の拠点、通過の拠点として、沖縄におけるポテンシャルを高めることができるという事業もこのスタートアップの中から芽出しができるだろうということを非常に期待している。強くしなやかな自立型経済を構築するためには、そのような機会の創出も含め、関連的なさまざまな政策を総合的に推進していきたい」

県庁職員の働きやすい環境づくり

 ー2期目の後半2年間は、どこに一番力を注ぐか。

 「沖縄には重要課題がたくさんあり、例えば離島振興なくして沖縄県の経済発展なしということもそうだし、子どもの貧困対策は社会全体の状況も考えるとやはり重要な政策であることは言うまでもない。そのように全体的に、俯瞰(ふかん)的に捉えることによって、どこに光と影の部分があるのかということを(把握し)今度はそこに近づいていって、しっかりと確認をすることが大事だ」

 「県庁の中の組織の在り方、職員にとってのワークライフバランス、働きがいの構築が、ひいては県民サービスに転化していけるようなそういう好循環の環境をつくるということも、これから2年間の間でどうつくっていくのかは非常に重要だ。今の若い世代の方は、かつての安定的就職先である公務員、役所の仕事というものに、やりがいや自分の存在意義とか、そういうものも含めて取り組みたいというムードが非常に高まってきていると思う。残り2年間は、県庁職員の皆さんも、県民のために働いててよかった、働きやすい職場で良かったというようなことを実感できるような環境もつくっていけるように取り組んでいきたい。みんなが笑顔であることが一番の私の願いなので、みんなで笑顔になれる環境を少しでもたくさんつくっていけるように、私も笑顔で頑張っていきたい」