有料

大勢の避難民に驚く 喜屋武貞子さん(5) 母の戦争<読者と刻む沖縄戦>


大勢の避難民に驚く 喜屋武貞子さん(5) 母の戦争<読者と刻む沖縄戦> 現在の名護市久志の集落
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 喜屋武貞子さん(84)=那覇市=の母、稲嶺千枝さんが久志村(現名護市)の山中で出産した後、家族や親戚は米兵に捕らわれます。

 《鉄砲を持った米兵たちが現れた。二世らしき兵士が「みんなそこに並べ」と言った。山道に二列くらいの長い列ができた。ひっそりしていた山の中から、いつの間にか大勢の人が出てきた。普段は声一つ聞こえなかったのに。どこに、こんなたくさんの人が隠れていたのか。》

 山中に大勢の人が隠れていたことを知り、喜屋武さんは驚いたといいます。

 「米兵が『戦争は終わったから出てきなさい』と呼びかけると、山中では物音もしなかったのにいっぱい人が出てきました。畑道にできた列は100メートルくらいありました」

 山中では日本兵に会うことはありませんでした。「日本兵も隠れていたんでしょう。でも全然見ませんでした」と喜屋武さんは語ります。

 米兵は子どもたちにチョコレートを配りました。

 《チョコやガムが配られ、子どもたちは目を輝かせた。親たちはそっとささやいた。「食べるんじゃないよ。毒入りかも…」。米兵たちは自分で食べて見せた。》

 喜屋武さんは「本当は食べたかったけれど、毒が入っているかもしれない。でも、捨てるのももったいないので、そっとしまいました」と振り返ります。