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6月はプライド月間<伊是名夏子100センチの視界から>176


6月はプライド月間<伊是名夏子100センチの視界から>176
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 学校の友達と遊んだり、勉強をしたりしたいけれども、男女に分かれた制服を着るのが苦しくて、登校できない人がいます。特別な理由がある場合は配慮をしてもらえることもありますが、まわりが当たり前のように着ている制服だからこそ、私は嫌、と言いづらいことがあります。またプライベートな理由、アイデンティティーに関することを説明するのは不安です。そうなると他の理由をつけながら、学校を休まざるを得なくなります。

 まわりは学校を休んでいる人の力になりたいと思っていても、本当の理由が分からないので、サポートするのが難しいことがあります。困っている本人も、心の内を隠し続けるのがどんどんつらくなり、まわりと話すことを避けるようになったり、きつい言葉を使ってしまったり、引きこもらざるを得ないことも出てくるでしょう。そうなるとまわりからは、助けてあげたいのに攻撃的に出て、殻に閉じこもる困った人だと思われることがあります。

 「困っている人は、困った人になりやすい」と多くの若者を支援してきた精神保健福祉士の鴻巣麻里香さんは言っています。車いすユーザーの私も、同じことがよくあると感じています。階段しかない駅を利用したくて助けを求め、話し合いをしようとしても、わがままだと思われてしまうからです。バリアフリーを求め、環境改善のために声を上げているのに、みんな頑張っているのだから自分のことばかりを考えないで、お金がかかることはできない、と言われます。

 困った状況があることこそが問題なのに、その人自身に問題があるとすり替えられてしまうのです。困った人認定されると、どんなに事実を訴えても、いつもうるさいことを言うわがままな人だと思われ、無視されるだけでなく、時には誹謗(ひぼう)中傷され、押さえつけられることもあります。

 6月はセクシュアルマイノリティーの権利や現状の課題に目を向け、パレードなどが行われる「プライド月間」です。玉城デニー知事は性的少数者カップルの関係を公的に証明するパートナーシップ制度を、本年度中に導入する方針です。現状に合った制度を作り、さまざまな選択肢を用意することではじめて、当たり前であるはずの幸せを得られる人がいます。いろいろな生きづらさに耳を傾け、自分ができることを考え、一歩を踏み出す月にしたいですね。


 いぜな・なつこ 1982年那覇市生まれ。コラムニスト。骨形成不全症のため車いすで生活しながら2人の子育てに奮闘中。現在は神奈川県在住。