沖縄ヘイト、無関心が拍車 メディアの果たす役割も議論に 池宮城秀意記念フォーラム


沖縄ヘイト、無関心が拍車 メディアの果たす役割も議論に 池宮城秀意記念フォーラム 「沖縄ヘイトにあらがう―私たちに何ができるか」と題して開かれたフォーラム=10日、那覇市泉崎の琉球新報ホール(大城直也撮影)
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 琉球新報社の創刊130年記念事業・池宮城秀意記念フォーラム「沖縄ヘイトにあらがう-私たちに何ができるか」が10日、那覇市泉崎の琉球新報ホールで開かれた。基調講演やパネルディスカッションを通じて沖縄に対するヘイトスピーチの現状や問題点を確認し、対抗策について意見を交わした。会場には約400人が訪れ、オンラインで約200人が視聴した。

 基調講演では、反ヘイト団体「のりこえネット」共同代表の辛淑玉(しんすご)氏、毎日放送ディレクターの斉加尚代氏が登壇した。

 辛氏は石原慎太郎元東京都知事による2000年の「三国人」発言に触れ「公的な人間の差別発言が、人々に(差別発言の)お墨付きを与えるようなものだ」と指摘。「嫌韓」ブームなどによる経済的な波及効果が差別を増幅させ、その照準が近年は沖縄に移っているとの見解を示した。

 ヘイト行為をする人々について「彼らがやっていることは娯楽だ」と主張。ヘイトスピーチをする人々に根付く歴史修正史観を指摘しながら「自身の強さを確認するために絶対的に必要なのは沖縄差別であり沖縄ヘイトだ」とした。

 斉加氏は沖縄で取材した男性から「ものを言わないことが政治的だ」と伝えられたエピソードに言及し、人々の無関心が沖縄ヘイトに拍車を掛けているとの見方を示す。

 県外メディアが沖縄の諸問題に向き合えていない問題を挙げる一方、戦争体験を教訓に権力に対峙(たいじ)する沖縄のジャーナリズムを評価。「偽情報やヘイトが世界を駆け巡る中、新聞社の発信力や取材力は一層重要性を増している。地元に寄り添うメディアの存在は未来を照らす光だ」と述べた。

 パネルディスカッションではノンフィクションライターの安田浩一氏、むぬかちゃーの知念ウシ氏、市民団体「ニライ・カナイぬ会」共同代表の仲村涼子氏も加わった。
 (小波津智也)