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男性の育休事情 長期的なチーム育児を 野崎聖子(うむやす法律会計事務所代表、弁護士)<女性たち発・うちなー語らな>


男性の育休事情 長期的なチーム育児を 野崎聖子(うむやす法律会計事務所代表、弁護士)<女性たち発・うちなー語らな> 野崎聖子
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 サンエーでの会議でのこと。その日のトピック担当者の1人である男性社員が、育児休業中ではあったが会議の経過を把握したいと自宅から会議にリモート参加した。会議終了後、上司から「育児は大変ですか?」と声をかけられた男性社員は「授乳以外は何でもできます。仕事はチームでやるから大変なこともチームで共有して乗り越えられる。育児も、大変は大変だけど、全て1人でやるのではなく(妻と)チームでやればそれほど負担を感じないかもしれません」と語った。頼もしく感じるとともに、この気付きは育休の重要な成果だと思った。男性上司の「うちあたいする…」という声も聞こえてきた(笑)。

 厚生労働省の発表によると、全国の従業員数1千人超の会社に対する2023年7月のアンケート調査では、回答した企業の男性労働者の育休取得率はなんと46・2%だった。中小規模の事業所が調査対象に入っておらず、取得日数が短くても取得実績にカウントされるため、この数字の評価は難しい(22年度雇用均等基本調査では男性17・13%、女性80・2%)。しかし男性の育休取得率は確実に上昇しており、当たり前になりつつある。

 沖縄でも育休の有給化や男性の取得義務化を実施している企業はあり、ここ数年で社会は大きく変わった。両親とも14日以上の育休を取得した場合の給付金を「手取りで10割」に引き上げるとの動きもある。男性の育休取得の取り組みは、職場の風土改善、従業員満足度の向上、コミュニケーションの活性化につながり、企業全体に良い影響を及ぼすという。人材不足が叫ばれる中、採用面の効果があるとも聞く。そして何より、孤独な育児を防止する。

 一方で男女を問わず育休で仕事から離れることに不安を感じる社員もいる。私も上の子の時は「もう弁護士に戻れない」と思った。不安を減らすため、特に管理職の場合などに本人の希望があれば、サンエーの事例のような育休中の一時的就労(出勤)を認めるなど柔軟な対応があってもよい。給与は発生するが業務状況を把握したい社員のニーズにかなう。

 もっとも、子育ては20年超のプロジェクトであり、育休時期の1~2年はほんの序盤に過ぎない。子どもが保育園や学校へ行くようになると頻繁に病気をもらってきたり、イヤイヤ期や思春期には何かと手を焼いたりし、それこそ子育て業のチームワークが必要だ。両親が長期的にチーム育児できるように、フレックス制や時短勤務も、もっと活用されてよい。

 子育ては周りに理解ある人がいると幸せを感じる度合いが大きくなるものだ。家族のため、または身近にいる育児中のパパ・ママを応援するために、「うちあたいする」先輩方も、できることはまだきっとたくさんあるはずです。