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高校生失明事件 警察官の被告「私が前に出たことが原因」 謝罪申し出は2週間前、被害者側「自己保身だ」 那覇地裁初公判


高校生失明事件 警察官の被告「私が前に出たことが原因」 謝罪申し出は2週間前、被害者側「自己保身だ」 那覇地裁初公判 業務上過失傷害罪に問われた警察官の初公判=那覇市樋川の那覇地裁(代表撮影)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 沖縄市の路上でバイク走行中の当時高校生だった男性(18)に重傷を負わせたとして、業務上過失傷害罪に問われた警察官の被告(31)は、2022年1月の事件発生から2年が経過するのを前に、初めて公の場に姿を見せた。那覇地裁で4日に開かれた初公判。事件で右目を失明した男性に向かい、ついたて越しに深く頭を下げて謝罪した。ただ、被告が男性に謝罪と被害弁償を正式に申し出たのは、わずか2週間前。被害男性側は法廷での謝罪を「パフォーマンス」と一蹴した。

 被害男性の席の前には、傍聴席と被告からの視線を遮るついたてが設置された。被告は、弁護人からの被告人質問の終わりに、ついたての奥に座る男性と、傍聴席で裁判を見守る男性の親族らに対し、それぞれ数秒間、頭を下げた。「本当に申し訳ありませんでした」。公判の最後にも同様に頭を下げて、謝罪の言葉を重ねた。

 被告人質問でも「私が車両(バイク)の前に出たことが原因だと思っている」と、男性が運転するバイクの速度以外は争わず、自身に非があると繰り返した。ただ事件当初に、バイクが停車しなかったことが事故原因などと供述していたことなどを、男性側代理人に追及されると「瞬時のことだったので、分からない」と言葉を濁す場面もあった。

 被害男性は、被告の言葉に時折納得いかない表情を浮かべながらも、淡々と裁判の行方を見守ったという。代理人が代わりに読み上げた陳述書では、被告の主張や行動を「自己保身ばかり」と切り捨て、公判直前の謝罪や被害弁償支払いの申し出に「心証をよくしたいとの考えにしか見えない」との見方を示した。

 被害男性の陳述書では「誹謗(ひぼう)中傷が続くことが本当に怖い」「運転やスポーツなど普通の人ができることも、僕はできなくなりました」と、事件で大きく変わった生活や今後への不安もつづった。罰金刑の求刑で、男性側が求める実刑が被告に下される可能性は極めて低くなった。代理人弁護士は「禁錮刑以上なら失職する可能性がある。忖度(そんたく)した軽い求刑だ」と強く非難した。