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【記者ノート】政府の欺瞞、見抜く住民 南彰記者(編集委員、暮らし報道グループ)<歩く民主主義 100の声>


【記者ノート】政府の欺瞞、見抜く住民 南彰記者(編集委員、暮らし報道グループ)<歩く民主主義 100の声> 南彰記者
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 今回の調査は、鹿児島県屋久島沖に米空軍輸送機オスプレイが墜落した事故の前に行った。

 事故後に再び話を聞いた男性の住民はつぶやいた。「返還合意から二十数年たった今も米軍が普天間を使い続け、辺野古が完成した後の返還をはっきりさせない状況と、墜落事故後もオスプレイが飛び続けている状況はつながっている」

 「つながっているのは?」と尋ねると、「住民の生活より対米追従。そうした政府の姿勢だ」と語った。

 2004年に米軍ヘリが墜落した沖縄国際大、17年にヘリの窓が校庭に落下した普天間第二小学校―。過去の事故現場をたどりながら、普天間飛行場周辺を歩いて耳に残ったのは、住民たちのため息だ。国の「安全保障」に振り回されて、自分たちの生活の安全や平穏さが二の次にされてきた徒労感と不信感がにじんでいた。

 不信を突きつけられた政府は、それでも代執行によって県の抵抗権を奪い、辺野古建設を進めることによって、「普天間飛行場の1日も早い全面返還を実現する」と繰り返すのだろうか。しかし、それは普天間周辺住民の安全な生活の確保を、さらに十数年先送りする宣言にほかならない。

 辺野古とセットにして「普天間の危険性除去」を語る政府の欺瞞(ぎまん)を住民が見抜きつつある現実を、政府も裁判所も重く受け止めるべきだ。