prime

自衛隊増強、県内在住者の受け止めは? 沖縄が「標的」懸念も<歩く民主主義 100の声>


自衛隊増強、県内在住者の受け止めは? 沖縄が「標的」懸念も<歩く民主主義 100の声> 慰霊の日に合わせ大勢の人が訪れた「平和の礎」=23日午後1時45分、糸満市摩文仁の平和祈念公園(小川昌宏撮影)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 「台湾有事」などを想定して増強される自衛隊の姿をどのように受け止めているのか。6月22、23日に糸満市摩文仁や各地の慰霊祭で県内在住・県出身者の100人に聞くと、自衛隊の変質を感じ取る意見が広がっていた。自衛隊増強に理解を示す人からも、有事をあおり、国民に「戦う覚悟」を求める政治家への批判が聞かれた。

 那覇市に拠点を置く陸上自衛隊第15旅団が、日本軍で沖縄戦を指揮した牛島満司令官の辞世の句を公式ホームページで掲げるようになったのは2018年。集団的自衛権の行使に道を開いた安倍晋三首相(当時)が憲法に自衛隊を明記する9条改正案を打ち出した翌年だった。

 糸満市摩文仁の平和の礎(いしじ)にいた元高校教員の渡名喜庸盛さん(77)は危惧した。「戦争を美化していこうという状況。軍国主義が復活して沖縄がまた犠牲になりそうだ」

 礎には姉と兄の名前が刻まれている。「子や孫の代まで戦争にならないように頼みます」と祈りをささげた。自衛隊増強、司令官の句掲示の両方に最も強い反対の「マイナス3」を選んだ。

 摩文仁にいた自営業の女性(76)は父が牛島司令官の料理を担当していたという。「父は司令官のいいことは言わなかった。親族も『あの戦争で跡取りを亡くした』と文句を言っていた」と振り返り、「マイナス2」と答えた。

 自衛隊は1972年の県内配備後は、日本軍を想起する県民から根強い反発があった。その間、災害や救助、不発弾処理などに取り組んできた。

 南城市の事務職女性(51)は「災害時に助けられることもあると思うので心強い」と自衛隊増強には「プラス2」と賛成だ。それでも、司令官の句掲載には「マイナス3」と強い反対を示す。「災害対策などでいいイメージになっていたが、過去の戦争のイメージがよみがえってくる」

 自衛隊の変質を懸念し、「基地は狙われる防衛になっている」と自衛隊増強の負の側面についても心配を口にした。

 南西シフトで進む自衛隊増強について、摩文仁や各地の慰霊祭で100人に聞くと、賛成は19人。どちらとも言えないが16人、反対が65人だった。特に沖縄が「標的」となり、再び戦場になることへの警戒を口にする人は20人近くいた。

 考古学者の安里嗣淳さん(78)は「国際的に軍事強化をアピールしているのは余計なことだ。住民が住んでいる島に基地なんか置いたら狙われる」と話す。

 政治家の「戦う覚悟」の発言にも憤る。「迷惑だ。中国とも米国とも仲良くしたい。日本は資源もないし、現在の軍事力では少しはもっても、すぐにやられる。またそんな戦争をやる気ですか」

 那覇市の教員吉川麻衣子さん(40代)は、世界情勢を見ると防衛は必要とした上で、自衛隊増強について「戦争を誘発してしまうのではないかと感じている。沖縄戦の歴史を見ると、軍隊がいることでやられた」。大城律子さん(75)は「戦争に向かう準備のように感じて恐怖だ。外から見ても日本が準備していると思えるのではないか」と語った。

 100人のうち60人には「『沖縄が戦場になった』79年前と同じ状態が100%、『沖縄が戦場になる心配が全くない』状態を0%としたら、いまの沖縄の状態は何%ですか」と尋ねた。自衛隊増強に反対の人の方が戦場になる可能性への危機感が強かった。

 父と兄の慰霊にきた真栄平弘通さん(83)は「99%」と答え、こう訴えた。「悪い方向にばかり向かって戻らない。日本政府が聞く耳をもたない。遺族の声をもっと聞いてほしい」