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困った時の支援 優しさを循環させよう 新垣道子(グラアディア共同代表) <女性たち発・うちなー語らな>


困った時の支援 優しさを循環させよう 新垣道子(グラアディア共同代表) <女性たち発・うちなー語らな> 新垣道子(グラアティア共同代表)
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 この時期になると思い出す光景がある。企業に勤めていたある冬、長期ロンドン出張があった。現地に到着した寒い夜、私は重いスーツケースを1人でガタガタと運んでいた。ロンドンの地下鉄は深く長く、地上に出る途中の階段で、そのスーツケースを運ぶのはかなりつらい。泣きたい気持ちでいると、どこからともなく現れた女性が「お手伝いしましょうか」と言って、一緒にスーツケースを運んでくれた。

 お礼を伝えると、「こんな時、私もいつも誰かが手伝ってくれたわ。当然よ」と、いとも爽やかに、どこかへ消えていった。時間にしてわずか数分。それでも、日本で経験したことがないこの出来事は、私の脳裏に焼きつき、10年たった今でも思い出す。感謝の気持ちがあふれる、優しい時間だった。

 “Pay it forward”と言う言葉がある。受けた好意を他の人に送る、というものだ。近年、私は、さまざまなボランティア活動を積極的に行っている。小学生向けのワークショップ開催、学生向けの次世代リーダー育成の支援。また、スタートアップイベントでは起業家へのメンタリング、企業向け管理職女性リーダーたちへのセミナーやアドバイスなどだ。

 「忙しいのに、よくそんなに活動ができるね」と言われる。が、知識も人脈も何もかも足りない20代の頃から、私の人生は、いろいろな方々に助けてもらってきた人生だ。これまで、周りの人から頂いた見返りない好意や優しさ、授かってきた知恵を、私なりに社会に返していきたい、という気持ちがどこかで働いている。

 欧米では定着しているこの“Pay it forward”の概念。沖縄にいる外国人コミュニティーのネット掲示板では「ホリデーシーズン、家族や友人といられずに寂しい思いをされる方がいたら、私の家のディナーにどうぞ」というお知らせを見た。以前いた外資系企業では「Global month of giving(12月は人に与える月間)」とうたい、ボランティア活動やチャリティー団体への寄付が推奨されていた。

 どんなことでもいい。もっと多くの人たちが、可能なタイミングで、そして、自分のできることで、優しさを分け与えていけば、ポジティブな循環の輪が世の中に広がっていくのではないか。何もギブ・アンド・テイクのギブだけの話ではない。自分が助けを必要とする時には、そう伝え、遠慮なくサポートをもらえば良い。優しさや支援の輪は、どんどん大きな輪となって、循環していくのだと思う。新しい年も、私たちの1人1人が、優しさや希望に満ちあふれる年となりますように。