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自然と向き合い、一つ一つ 喜如嘉の芭蕉布・山城 薫さん <伝統工芸製品・県指定50年>


自然と向き合い、一つ一つ 喜如嘉の芭蕉布・山城 薫さん <伝統工芸製品・県指定50年> 木灰汁で炊き、柔らかくなった芭蕉を竹ばさみでしごいて繊維を取り出す「苧引き(うーびき)」に取り組む山城薫さん=2023年11月28日、大宜味村喜如嘉(大城直也撮影)
この記事を書いた人 Avatar photo 武井 悠

 大宜味村喜如嘉の芭蕉布は原料のイトバショウ栽培から布になるまで半年から1年かかる。自然と向き合い、手間暇かかる一つ一つの作業に作り手たちが黙々と共同で取り組む。昔と変わらぬ工程。その積み重ねが軽やかな布を生み出す。

 喜如嘉芭蕉布事業協同組合の平良美恵子理事長によると、完成までに20以上の工程がある。1984年には全工程に延べ約130人が従事していたが、今は50~60人と半減し生産者の高齢化や後継者育成が課題だ。その中で山城薫さん(42)=国頭村=は20代の頃に作り手になった。

喜如嘉で織られた芭蕉布(着尺地帯地)

 子育てが落ち着き、仕事を探していた頃、知人の紹介で喜如嘉の芭蕉布と出合った。ものづくりへの興味はあったが芭蕉布の存在は知らなかった。工房の機織りや糸車を見て、「昔ながらの道具があることに驚いた」と笑う。ここならと感じるものがあった。

 工房に入って最初は糸繰りや畑の手入れをし、織り方を学んだ。簡単な仕事はない。「すべてを一つ一つ丁寧にしないと後が大変になると常々教えられた。それを今も大事にしている」と語る。緊張感を持ち続けることも大事にしている。

 喜如嘉の芭蕉布を「沖縄の唯一無二の仕事」と表現する山城さん。平良理事長は「芭蕉布に作者の名はないと言うほど、みんなの力がないとできない。仲間として毎日穏やかにやってほしい」と見守る。

(文・武井悠)(写真・大城直也)

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【喜如嘉の芭蕉布】

 大宜味村喜如嘉で生産されている芭蕉布。イトバショウから繊維を取って織り上げ、軽くさらりとした風合いが特徴。喜如嘉では昭和に技術や生産量が向上し他を圧倒した。沖縄戦で壊滅状態となったが故平良敏子さんの尽力で復興した。