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大浦湾着工 「何も起こらない保証ない」進む工事に不安訴え 瀬嵩・西平さん「海の美しさ知って」 高江・西銘さん「新たな基地を懸念」


大浦湾着工 「何も起こらない保証ない」進む工事に不安訴え 瀬嵩・西平さん「海の美しさ知って」 高江・西銘さん「新たな基地を懸念」 ヘリ炎上事故の現場で当時の状況を説明する西銘晃さん=12日、東村高江
この記事を書いた人 Avatar photo 金城 大樹

 沖縄県名護市辺野古の新基地建設を巡り、国は10日、大浦湾側の埋め立て工事に着手した。大浦湾に面する瀬嵩区の西平伸区長(66)は工事で埋め立てられる海の美しさを知ってほしいと願う。2017年に自身が所有する牧草地に米軍のCH53大型輸送ヘリコプターが不時着・炎上する事故があった、東村高江の西銘晃さん(70)は新たな基地ができることを不安視する。

 西平さんは約20年前、基地問題を知らない人にも自然豊かな大浦の海を知ってもらおうと、有志5~6人とダイビングチーム「すなっくスナフキン」を設立した。仲間と海に繰り出して大浦湾に生息する魚などの写真を撮り、記録してきた。防衛局が実施した環境影響評価によると、大浦湾には絶滅危惧種を含む5334種の生き物が生息する。西平さんらは、これまでに約千種類近くは撮ったという。

大浦湾の美しさを知ってほしいと語る瀬嵩区の西平伸区長=12日、名護市の瀬嵩区公民館
大浦湾の美しさを知ってほしいと語る瀬嵩区の西平伸区長=12日、名護市の瀬嵩区公民館

 10日、国が海上ヤード造成のため最初に石材を投入したポイントは、西平さんらがよく潜っていた場所だった。「楽しくやっていた場所に、一番先に投げ入れられたのはショックだ」

 着々と工事を進める国に対し「怒るとかそういうステージはとっくに過ぎた」とあきれたように話す。「訴えるべきところに訴えても聞いてもらえない。ほかにどうすればいいのか」と嘆く。「写真はいつでも公民館に展示されている。こんなにきれいな海に、こんなに生き物がいるんだと知ってほしい」と願った。

 所有する牧草地に米軍ヘリが不時着した西銘さんは、辺野古の新基地建設に「地元住民を説得したとしても、今後、何も起こらないという保証にはならない」と警鐘を鳴らす。そして「これまで色んな報道があったが、あまり変わってこなかった」と肩を落とす。

 17年の事故当時、日米地位協定が妨げとなり、県警が十分に現場検証できないまま米軍は事故機を搬出した。西銘さんは事故原因の究明を求めたが、20年に県警は被疑者不詳のまま書類送検し、不起訴処分となった。事故後には、夜間に米軍が集落を避けて飛行できるように航空標識も設置されたが、今でも西銘さん宅上空ではオスプレイやヘリが飛ぶという。

 「不時着したんだから原因はあるはずなのに不明なのはおかしい」。納得できる説明もないまま、事故前と変わらず集落上空を飛行する米軍に不信感を募らせる。そんな中、辺野古で基地建設が進む。「はっきりとしたことは言えないが、やっぱり将来に不安はあるよな」と疲れたように語った。

 (金城大樹)