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米軍に関する調査・分析 問題打開へ研究網構築を 波照間陽(成蹊大学アジア太平洋研究センターポスト・ドクター) <女性たち発・うちなー語らな>


米軍に関する調査・分析 問題打開へ研究網構築を 波照間陽(成蹊大学アジア太平洋研究センターポスト・ドクター) <女性たち発・うちなー語らな>
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 前回のコラムでは、米軍に関する数々の疑問に対して中・長期的な調査研究が必要だという話をした。米軍基地は世界中に点在するが、他地域のケースから沖縄に応用できることはないか。

 沖縄には知識、知恵、アイデアの集積が必要である。中央政府の強大な権力、法律という崩しがたい壁に、反対を唱える声だけでは現状を打破できないのが厳しい現実である。そうした状況をしっかりと見極め、打開策を得るために人智が求められる。

 このように考えるきっかけになったのは、私が2013、14年度に沖縄県知事公室地域安全政策課の研究員として勤めた経験である。約2年、庁内で業務をしながら気付いたことの一つは、県として専門的知識を蓄積し外部研究者とのネットワークを維持することが難しい構造になっていることである。

 県庁職員は良くも悪くもジェネラリストであり、数年で部署が変わる。基地対策課の職員は日々の業務に追われ、調査研究に割ける時間が確保できない状況である。沖縄県軍用地転用促進・基地問題協議会や県議会の政務調査課といった組織もあるが、同様の状況が見受けられる。

 また、県は特定の調査研究を委託事業として毎年公募しているものの、委託を引き受けるシンクタンクなどの組織は多くなく、理想的な競争ができていない。県内のシンクタンクでインターンをしたことがあるが、人手・資金不足の問題を抱えている状況だった。

 沖縄に有益な知識は確実にある。それらを一時的に拾い集めてまとめ、その後ほったらかしにするのではなく、集めてとどめておいて、そこからエッセンスを抽出し、議論や政策に生かす仕組みが必要だと考える。

 国内外の研究・研究者にアクセスのある人材が沖縄に拠点を置き、彼らがハブ(軸、基点)となり、研究者ネットワークが構築・維持されるのが理想である。ネットワークから生み出されるアイデアやロジックによって、県の主張が理論的に補強されたり、沖縄の声がこれまでとは違う形で届いたりするのではないか。

 こうした研究機関がどのような形態をとるのが良いかは検討の余地がある。日本の国会図書館には「調査及び立法考査局」、米国には「連邦議会図書館議会調査局」という、議員の立法活動を補佐することを主目的とする機関がある。それに類似する組織をつくることや、県内の大学や付属研究所にその機能を持たせることも可能であろう。現存のシンクタンクの機能強化を図るという手も考えられる。重要なのは、その機関が不偏不党かつ県益に資するという本旨が広く共有されることである。