石垣市教育委員会が市内9校の市立中学校校長宛てに、職場体験学習実施に向け、自衛隊の資料を活用するよう依頼する文書を配布していたことが17日、分かった。
市教委は自衛隊沖縄地方協力本部石垣出張所から頼まれたとし、自衛隊が生徒の職場体験の「選択肢の一つ」との見解を示した。導入するかどうかは各学校が判断する。
学校関係者からは「危惧していたことが起こった。公務員として教委の依頼は断りづらい」と不安の声が上がっている。識者は「拒否しづらい環境下で、軍事的な側面を持つ自衛隊を教育現場に組み入れるのは危険だ」と指摘した。
文書は1月11日付、﨑山晃教育長名。題は「陸上自衛隊石垣駐屯地を活用した職場体験学習の資料の配布について(依頼)」。自衛隊側から配布依頼があった資料を「ご活用ください」と記している。この文書と併せ、自衛隊側が作成した「自衛隊職場体験学習のご案内」と題したカラー10ページの資料も配布された。学校側が自衛隊での職場体験をイメージしやすくするためのもの。市教委は、職場体験はキャリア教育の一環で、目的は「子どもたちの望ましい勤労感を育てる」こととしている。
市教委は昨年10月下旬ごろから、自衛隊側から依頼を受けて資料内容に関する協議を開始。「市民感情に配慮し」戦闘訓練などではなく、人命救助などの内容になるよう調整したとしている。
一方、学校関係者は石垣駐屯地配備計画が浮上して以来、自衛隊による教育現場への介入を危惧していたとして「戦争に協力する子どもたちにしたくない」と視線を落とした。
沖縄大学教授で憲法学の高良沙哉さんは憲法で職業選択の自由が保障されているとはいえ、自衛隊そのものが憲法の観点から議論があると指摘。「他の職業と同様に扱うのは危険で、教育現場で自衛隊を推進するような動きは問題視しなければならない」と警鐘を鳴らした。
自衛隊沖縄地方協力本部石垣出張所は17日、本紙の取材に「事実関係が取れ次第、回答する」と答えた。
(照屋大哲)