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【識者】官製ワーキングプアの是正、市民理解が必要 市町村の会計年度職員の給与「遡及なし」


【識者】官製ワーキングプアの是正、市民理解が必要 市町村の会計年度職員の給与「遡及なし」  金高 望弁護士
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 官製ワーキングプアという言葉があるように、役所の正規と非正規職員の格差は昔からある。今回の遡及(そきゅう)を巡る問題も、格差が是正されていないことの表れだと思う。

 行政の処分は、処分が行われて初めて効力が生じる。遡及して支払うという処分がない場合、法的に請求できるほどの違法性があると言えるかは少し難しいように感じる。国からの遡及適用の通知にも、法的拘束力はないと考えられる。

 ただ、違法性が問えないからといって放置していい問題ではない。人事院勧告制度は、争議行為などに制約のある公務員に対する代償措置であり、勧告は極力尊重されるべきだ。行政が何が正義で何が公正かをしっかり判断して対応する必要がある。システム面を理由に遡及できないとする自治体もあるようだが、遡及する自治体もある以上は不可能とは思えない。

 今回の問題は公務員の待遇の悪化という流れの中で生じている。一昔前には、市民の中に公務員を削減することが良いことだという風潮が色濃くあった。人件費を削減し、正規職員を減らした分を会計年度任用職員などの非正規としてきた。結果として会計年度任用職員は極めて不安定な雇用状態に置かれている。

 公務員を減らして予算を切り詰めることに喝采する風潮が残る限り、官製ワーキングプアを是正することは難しい。自治体が公的サービスを提供するには人件費がかかるということを市民が受け入れることが必要だ。

(金高望弁護士)