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沖縄戦、VRで学ぶ 生徒が「時空記者」 当時を取材 豊見城市教委 戦後80年へ教材作り


沖縄戦、VRで学ぶ 生徒が「時空記者」 当時を取材 豊見城市教委 戦後80年へ教材作り 沖縄戦VRについて議論する制作検討委員会のメンバーら=16日、豊見城市教育委員会文化課
この記事を書いた人 Avatar photo 岩崎 みどり

 豊見城市教育委員会(瀬長盛光教育長)の文化課は、2025年の戦後80年に向けて、VR(仮想現実)機能を使って沖縄戦を学ぶ、平和学習の新しい教材作りを進めている。VRの中で、生徒が「時空記者」となり沖縄戦下の集落を回って、人々の声を聞いたり物を観察したりして沖縄戦を取材する内容。市内の小、中、高校を対象に、電子黒板やタブレット端末で活用してもらい、副教材と併用して学習内容に幅を持たせる。戦況の変化に応じた3段階程度のステージを設ける。25年度から学校現場へ提供する予定。

 2020年に始まった「デジタル博物館事業」の一環。同事業では22、23年度に、戦前の航空写真や地形図、高齢者の証言から市内4集落の戦前の風景を、デジタルで3D復元してきた。復元した集落のデータを沖縄戦VRで使うことで、沖縄戦で失われた風景や文化も伝える。18年度の事業で、市在住の戦争体験者から聞き取った証言も活用する。

 23年度は、平和教育の専門家3人を交えた「沖縄戦VRコンテンツ制作検討委員会」で、平和学習の教材としての見せ方や考え方などを議論してきた。本年度最後の検討委員会が16日開かれた。検討内容をまとめた報告書を3月中にウェブ公開する。文化課の学芸員、島袋幸司さんは「報告書は、他市町村が平和学習を考える上で参考になると思う。沖縄戦VRもいずれは市外へも提供したい」と話す。

 検討委員は、琉球大学教育学部准教授の北上田源さん、教育旅行・平和教育を提供する「さびら」教育ファシリテーターの狩俣日姫さん、沖縄国際大学南島文化研究所特別研究員の喜納大作さんの3人。北上田さんは「戦争体験者の講話を聞くことが難しくなり、学校現場は平和学習の教材を探すのに困っている」と説明し、沖縄戦VR活用に期待した。喜納さんは「子どもたちが主体的に学べる教材。一方でゲームにならないようにする必要がある」と指摘。狩俣さんは「自分の地域の沖縄戦を知る教材になっている。なぜ学ぶのかを考えることが大事だ」と話した。

 (岩崎みどり)