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「命(ぬち)かじり生きる」祖父の戦争体験、伊江島の姉妹がつなぐ、歌で伝える 沖縄


「命(ぬち)かじり生きる」祖父の戦争体験、伊江島の姉妹がつなぐ、歌で伝える 沖縄 祖父の戦争体験を通して命の尊さを熱く語る渡久地明奈さん(右)と三線を奏でる渡久地実来さん=6月24日、南城市大里のあおぞら第2こども園(提供)
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 南城市大里のあおぞら第2こども園で6月24日、同園とあおぞらこども園の5歳児クラスの園児、あおぞら学童クラブの小1~小4の児童、合わせて約80人を対象に平和学習講演会が開かれた。伊江島出身のタレント「あっきぃな」こと渡久地明奈さん(41)と義姉でシンガーソングライターの渡久地実来さん(42)姉妹が、命の尊さや戦争のない世の中になることへの思いを伝えた。明奈さんは語り部として、亡き祖父の実話と教えを語り、実来さんは三線を奏で自作の曲などで平和へのメッセージを伝えた。

 明奈さんの祖父は伊江島で「集団自決」(強制集団死)を体験した。悲惨な体験をめったに話さなかったというが、明奈さんが小6の時にお話大会出場に向けてその体験を聞き取り、発表した。県大会で見事、最優秀賞を受賞し、その内容を語り継いでいる。

 祖父が語る姿を再現したかのように熱演した明奈さん。「おじいが25歳の頃に大きな戦争があった。城山(ぐすくやま)も畑も爆弾や火炎放射器で真っ赤に燃えていた。おじいは壕の中で隠れていた。その時よ、敵が鉄砲を持って近寄って来た。敵に殺されるよりは自分たちで死んだ方がいいと思ってよ、手榴弾(しゅりゅうだん)を爆発させて『集団自決』してしまった…」。自分は生き残ってしまい「戦争が終わった時に何度も死のうと思った。死んでいった人たちの声が聞こえた。命(ぬち)かじり生きらんなれぇ(命ある限り精いっぱい生きていきなさい)」と。

 明奈さんは「生きたくても生きられなかった人たちがいることを忘れないでほしい。助け合い、心が平和であることが大事」と熱く語った。明奈さんが作った詩に実来さんが曲をつけた楽曲「つなぐ花」を実来さんが歌った。また、実来さんが小6の時に「地球を守る大人になりたい」という思いを込めて作った曲「僕は空を」も紹介し、全員で歌い、会場が一つになった。

 照屋美央梨ちゃん(5)は「戦争っていやな気持になって悲しくて怖かった。もう戦争をしないでほしい」、玉城明莉さん(8)は「平和な時に生まれてよかった」と感想を述べた。

 あおぞら第2こども園の竹千晶園長は「子どもたちの心に響き、職員も心を打たれたようだ。沖縄戦の事実を風化させてはいけない。伝えていくのは大人の役目だ」と話した。

 今回の語りは、同園で明奈さんが教育実習をした縁で実現した。今後、県内の放課後児童クラブ(学童)などを巡り、「命(ぬち)かじり生きる」と題して祖父の体験や伊江島の戦争体験者から聞いた話を語っていきたいと話した。

 (中川廣江通信員)