【動画あり】伝統と動物愛護、溝埋まらず 糸満・アヒル取り競争 過去には姿消したイベントも 沖縄 <WEBプレミアム>


【動画あり】伝統と動物愛護、溝埋まらず 糸満・アヒル取り競争 過去には姿消したイベントも 沖縄 <WEBプレミアム>
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海に放った数十羽のアヒルを捕まえようと多くの人が海に飛び込み、アヒルを追いかける「アヒラートゥーエー(アヒル取り競争)」。うみんちゅのまち沖縄県糸満市の伝統行事・糸満ハーレーで行われる「アヒル取り競争」が動物虐待に当たるとして、祭り関係者の男性らが、2月22日付で動物愛護法違反の疑いで書類送検された。前代未聞の事態に、「伝統だからって許されることではない」「これがだめなら闘牛や競馬も許されないのではないか」など賛否の議論が巻き起こっている。伝統か、動物愛護か。今後の行事のあり方はどうなるか。波紋が広がっている。

(熊谷樹、古堅一樹、岩切美穂)

アヒルと人の知恵比べ、その始まりは…

ウミンチュの街が活気付く伝統行事、糸満ハーレー。その一環で行われる「アヒル取り競争」が動物愛護を巡って波紋を広げている=2023年6月21日

糸満ハーレーは、例年旧暦5月4日のユッカヌヒーに糸満漁港で開かれる伝統行事だ。豊漁と航海安全を願うウグヮン(御願)バーレーやクンヌカセ-(転覆競漕)があり、2012年に市の無形民俗文化財に指定された。

「糸満市史」によると、アヒラートゥーエーは港内に放たれたアヒラー(観音アヒル、バリケン)を泳いで捕まえる競争で、糸満ハーレーの名物種目だ。巧みに逃げるアヒルとそれを捕らえようと懸命に泳ぐ人との追いかけっこが見どころだ、との説明がある。

起源については、爬竜船競漕の起源とされる中国福建省でも同様のアヒル取りが厄難を払う行事として古くから行われており、それに倣ったものではないかといわれている。

1956年6月9日付琉球新報夕刊の「糸満ハーリー」の記事で「あひる取競漕」と記載があり、1960年5月28日付朝刊では「琉、米対抗のアヒル取り競争」とプログラムが紹介されている。1970年代から2000年前半まで、今帰仁村や沖縄市、伊是名村など各地のハーリーで実施されていたようだ。

1960年5月28日付琉球新報朝刊に掲載された記事。糸満ハーリーのプログラムとして「琉、米対抗のアヒル取り競争」とある