福島原発事故当時、福島県郡山市内の大学に通っていた沖縄県出身の30代男性=沖縄在住=が、事故で長野県の大学に編入するなどして損害を受けたとして、男性と70代の父親が東京電力ホールディングスに計約1399万円を求めて那覇地裁沖縄支部に提訴したことが10日までに分かった。県内で同社に損害賠償を求める訴訟は初。
訴状によると、男性は2009年4月に郡山市内の大学に入学した。11年3月の事故で同市は自主的避難等対象区域となり、男性は原発から離れていつでも引っ越せるよう各地を転々とした。放射線被ばくへの「強い恐怖や不安があった」ことから別大学への編入を考えて休学し、同年12月に長野県の大学への編入が決まった。
事故で受けた損害として、編入によって新たな支出となった学費などのほか、男性の就職が1年遅れたことで将来得られたはずの「逸失利益」、精神的損害の賠償などを求めている。
男性は提訴のきっかけについて取材に「家庭を持ち子どももできて、やっと人生の見通しも立ってきたので、原発の被害を総括しなくてはと思った」と語った。同社に対し「予想外、想定外に対応できるよう、もっと万全な対処をすべきであると思う。被害者側に立った賠償をすべきだ」と求めた。
同社は取材に「今なお福島県および広く社会の皆に多大なる心配と負担を掛けていることに、心より深くおわび申し上げる」とコメント。今後は「(男性らの)主張内容を精査の上、真摯(しんし)に対応する」とした。