伸びやかな「てぃんさぐぬ花」に重なるビートとラップ。沖縄民謡とヒップホップを融合させた新たな音楽を生み出すのは、唄者のKUNIKOさん(32)だ。東京都出身のDJで、11年前に父の故郷の沖縄に拠点を移し、民謡歌手の大城美佐子さんに師事してきた。「民謡は先祖とつながる希望の光。テーマは継承と創生。沖縄民謡を次世代につなぎたい」と力強く語る。
KUNIKOさんは2009年、UKダブステップのDJとしてデビュー。自身のルーツを深めようと13年、父の故郷である沖縄で古典音楽や民謡を学んだ。「特に民謡には人間臭さがある。生きとし生けるもののエネルギーを感じた」。師匠は沖縄を代表する民謡歌手の大城美佐子さんだ。大城さんが21年に亡くなった後は「次の師匠がほかに考えられなかった」という。「先生は私の中で生きている。先生と一緒にまだ見たことのない景色を見たい」
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失意の中にいたKUNIKOさんは、北谷のカフェが立ち上げたレーベル「BigKnot Records」で音楽を作るようになった。KUNIKOさんの楽曲は、ビートメーカーのARUと共に作ったビートに、自身の歌唱による民謡を乗せる。伸びやかで熱のこもった歌唱に、低音を効かせたビートが絶妙なグルーヴ感を生み出す。「民謡はこんなに自由に奏でられる。奥深さを伝えたい」
BigKnot Recordsのイベントを通じて出会った県出身のラッパーAwichさんからの依頼で、昨年発売のアルバムのタイトル曲「THE UNION」のコーラスに参加。前川守賢さん作詞作曲の「想(うむ)いションガネー」をアレンジするなど活動の幅を広げてきた。
1月には初のアルバム「Identity」を配信リリースした。ラッパーのOZworldさんやMuKuRoさんとの「Tinsagu Nu Hana(てぃんさぐぬ花)」、アフロビートに歌を乗せたオリジナル曲「我愛偉大的大琉球」など全5曲を収録した。5月には12インチレコードが発売される。「沖縄から世界中の人へ届いてほしい」と思いを語った。
(田吹遥子)