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【識者】計り知れない史実の解明に期待 門脇誠二氏(名古屋大学博物館教授)


【識者】計り知れない史実の解明に期待 門脇誠二氏(名古屋大学博物館教授) 門脇誠二氏
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 今回の発掘調査では、炉跡以外に人間生活を示唆する痕跡は見つかっていないようだが、人間と動物の明確な行動の違いに、火を扱うか否かがある。洞窟で火をたいたとなると、人の活動した痕跡である可能性は極めて高い。今後の調査で人が食べた動物の骨や石器などが見つかれば、琉球列島における人類史の研究は飛躍的に前進するだろう。

 石灰岩などアルカリ性の土壌を持つ沖縄では、近年、各地の発掘調査で旧石器時代の骨や遺物が出土し、新たな発見が相次いでいる。骨や灰の劣化が緩やかで、状態を維持したまま長年保存できる特異な環境は国内随一だと言える。

 一方で、沖縄には石そのものが少ないため、県外では多数見つかっている石器は極端に少ない。琉球列島にいた当時の人類は、貝など石器以外のものを活用して生活していた可能性もある。その特異な適応能力を含め、日本列島の遺跡からは計り知れない史実の解明が期待される。

 琉球列島の各地域から時代の異なる史料が出てくることで証拠が点から線となり、より広く、より深く考察できるようになる。この点においても、改めて同遺跡の重要性を認識したい。

 (先史考古学)
 (談)