有料

島の静けさ破る軍靴 石垣陸自が公道訓練 住民「行軍やめろ」「頑張れ」の怒声と歓声 沖縄 


島の静けさ破る軍靴 石垣陸自が公道訓練 住民「行軍やめろ」「頑張れ」の怒声と歓声 沖縄  携行食を詰めたはいのうを背負い、徒歩行進訓練を始める石垣駐屯地の隊員=24日午前6時ごろ、石垣市駐屯地正面ゲート前
この記事を書いた人 Avatar photo 照屋 大哲

 【石垣】迷彩服姿で背嚢(はいのう)を背負った約30人の隊員の列に、報道陣のフラッシュがたかれる。薄暗い早朝、軍靴と湿った地面がこすれる音が静かに鳴り続けた―。陸上自衛隊石垣駐屯地が公道を使った訓練を実施した24日、県内の自衛隊基地と隣接する地域の住民から批判が相次いだ。訓練に賛同する住民の声も聞かれた。 

 石垣市の於茂登岳のふもとに煌々(こうこう)と光がともる。24日早朝、辺りはまだ薄暗く、肌寒い。県内一高い山を背に陸上自衛隊石垣駐屯地の外灯が正面ゲートを照らした。午前6時、施設の奥から黒く長い固まりが近づいてくる。目を凝らすと、迷彩服姿で背嚢(はいのう)を背負った隊員の列だった。一斉に報道陣のフラッシュがたかれる。静寂の中で隊員の軍靴と湿った地面がこすれる音が鳴り続けた。

 駐屯地と目と鼻の先にある開南集落。家々の電気は消灯されたままだ。隊員が開南バス停を通過しようとした時だった。抗議のため朝5時から駆け付けていた市民の怒声が飛ぶ。「行軍をやめろ」。隊員はうつむき気味に歩く。

 石垣島の中央に位置する駐屯地周辺は比較的住宅や交通量は少ない。静かな駐屯地から隊員が向かったのは、人目に付きにくい北側ではなく、島の人口が集中する南側。県道87号の歩道上で一列になり、目的地に向け黙々と徒歩行進を続ける。

 雨が上がった午前8時前。隊員は交通量が多い地域に入った。運転手が次々に、もの珍しそうに視線を送る。自宅前の掃きそうじをしていた高齢男性は、眉間にしわを寄せ、普段は目にしない光景を見つめていた。

 目的地近くの市健康福祉センターの交差点には市民団体や市議会野党議員らが集まった。プラカードとのぼりを持ち、横断幕を掲げ、反対の意思を示した。

迷彩服を着用し公道を使用した訓練に反対の意思を示す市民=24日午前8時20分ごろ、石垣市

 そこから一つ隣の交差点を過ぎると、全く逆の光景が広がった。日の丸が揺れ、拍手が起き、「頑張れ」の声が上がった。八重山防衛協会など訓練に賛成する市民が隊員を出迎えた。隊員は目的地に到着し一休みしたあと、市民の怒りと期待の声を背に、同じ行程を徒歩で引き返し、駐屯地に戻った。

 (照屋大哲)