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共同親権 問題・改善点を指摘 参院・参考人質疑 双方合意前提に懸念 「子の声聞いて」要望も


共同親権 問題・改善点を指摘 参院・参考人質疑 双方合意前提に懸念 「子の声聞いて」要望も
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 離婚後の共同親権を可能にする民法改正案に関し、参院法務委員会は7日、参考人質疑を行った。参考人は推進、反対のそれぞれの立場から意見を述べた。また改正案を推進する参考人からも課題や改善すべき点などが上がった。

 改正案では、共同親権を選んだ場合でも日常の行為などについて一方の親権者で決定できるとしていることについて、東京都立大の木村草太教授は、学校のプールや修学旅行、病院でのワクチン接種や手術の予約などを例に「いつでももう一方の父母がキャンセルできる。その結果いつまでも最終決定できない状態が生まれる」と指摘した。

 東大大学院法学政治学研究科の沖野眞已教授は、共同親権であっても「急迫の事情」があれば単独で親権を行使できるなどとし、改正案は現行法の不備を補い、適時の意思決定ができないという懸念にも対処できると強調した。

 一方、DV被害者を支援するNPO法人「女のスペース・おん」(札幌市)の山崎菊乃代表理事は、制度導入で被害者と加害者が接点を持たざるを得なくなることを危惧。

 家庭裁判所の調査官としての勤務経験もある和光大学の熊上崇教授は、改正案に子どもの意見表明権や意思の尊重が含まれていないことも問題視した。「共同親権が子の利益になるのか」と疑問を呈し「進学や医療、転居に双方の合意が必要な共同親権を望む子どもたちの声は私の知る限りなかった。まずは子どもたちの声を聞くべきだ」と要望した。

 共同親権導入後に家庭裁判所で扱う事件数が増えることが想定されるとして、家裁の体制の充実が必要との指摘もある。浜田真樹弁護士は「裁判所側の体制整備も大変重要だ。事件数や業務は大きく増えても調査官はほぼ増員がない。試行面会を行う施設なども充実させることが不可欠だ」と強調した。

 離婚後の共同親権をめぐっては、虐待やドメスティックバイオレンス(DV)の被害者の安全を脅かすとの反対意見も根強く、県内でもひとり親の支援団体などから懸念の声が上がっていた。

 (慶田城七瀬、吉田健一、嶋岡すみれ、前森智香子)