離婚後の共同親権の導入を柱とする民法改正案が16日、衆院本会議で可決された。全国でもひとり親世帯の割合が高い沖縄では、共同親権が虐待やドメスティックバイオレンス(DV)被害者の安全を脅かすとの懸念は根強く、改正案の可決に落胆や怒り、失望の声が上がった。
数年前に離婚した本島南部の50代女性は、高校生と中学生の子どもの親権を持つ。元夫から共同親権の話が出てきた場合、「連絡を取り合うだけで精神的にきつい」と声を詰まらせる。
元夫から精神的なハラスメントを受け、家を出た。子どもは父親との面会を拒否しており、家を出て以来、顔を合わせていない。「良い形で離婚できた場合は共同親権でも良いと思うが、私たちはそうではない。子どもを安心して育てたい」と訴えた。
高校生の子ども2人の親権を持つ浦添市の女性(39)は「共同親権は絶対反対だ」と怒りをあらわにする。約4年前に離婚し、最近やっと一人で子どもを養っていける経済状況になった。「一人でここまで頑張ってきて、何もしてない人に共同親権と言われても困る」
10年前に、離婚した30代女性=本島中部在住=が心配するのは、子どもの気持ちだ。女性は元夫からの暴言などを理由に離婚した。3人の子どもを育てており、今後、夫側から位牌(いはい)継承のため共同親権を申し立てられないか懸念する。
子どもたちも夫との面会交流を嫌がっている。女性は「子どもたちに相当なストレスがかかるのではないか」と話した。
2人の子どもを抱える30代の女性=本島中部在住=は進学など大切な場面で、養育費を入れない元夫が「関わってくるかもしれない」と不安を募らせる。もし共同親権になったら「離婚の意味がなくなる」と憤る。
同性パートナーと妊活や子育てに取り組み、多様な家族の形を発信しているMatoさん(38)は「同性カップルの中には、以前の異性婚で子どものいる人や、第三者から精子提供を受けて子どもを授かる人もいる。同性カップルにどんな形で介入してくるのか気になる」と話した。
児童福祉に詳しい沖縄大の山野良一教授は、共同親権の是非以前に日本が「子どもの気持ちをくみ取れる仕組みが整っていない」と指摘する。DVなど家庭を取り巻く問題を解決する手段として家庭裁判所の機能拡充が必要との見方を示し、「親だけで解決するのではなく、子どもの意見を取り入れるための第三者が必要になる。社会的資源として裁判所が子どもの声をきちんと聞けるための仕組みをつくらないといけない」と語った。
(吉田健一、高江洲洋子、慶田城七瀬、中村優希、狩俣悠喜)