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さよなら「ちきあぎ」「ダンゴ」 かまぼこ店「ジランバ屋」 はじまりは料亭の女将の助言 沖縄


さよなら「ちきあぎ」「ダンゴ」 かまぼこ店「ジランバ屋」 はじまりは料亭の女将の助言 沖縄 ジランバ屋のかまぼこ=8日、那覇市松尾
この記事を書いた人 Avatar photo 中村 優希

 那覇市松尾の第一牧志公設市場に隣接する老舗かまぼこ店「ジランバ屋」が5月末で約100年の歴史に幕を下ろす。ゴボウの「ちきあぎ」やアーサーやにんじんの「ダンゴ」など沖縄風かまぼこの味が地元客に人気だった。

 創業者の玉城ジラさんは糸満市出身で、現店主の玉城洋子さん(76)の母。漁師だった玉城亀吉さんと19歳で結婚し、亀吉さんが捕ってきた魚などを売るイユウイ(魚売り)で商売をしていた。魚をおろしていた辻の料亭で、女将(おかみ)から「かまぼこを作ったら良いよ」と助言を受けたのを機に、かまぼこ作りを始めたという。

 1926年ごろには東町に店を構えた。沖縄戦当時は家族で宮崎県に疎開し、沖縄での商売は一時中断したが、疎開先でもまんじゅうを作って売るなど、商売好きで頑張り屋な性格だったという。

 戦後、沖縄に戻り、ジラさんは水上店舗の掘っ立て小屋で再びかまぼこ販売を始めた。三男四女を育てながら、戦前の味を守ってきた。四女・洋子さんは「優しくて自分のもうけよりも人助けを優先する人だった。母は偉大だ」と振り返る。

 ジラさんは1999年に亡くなり、娘や息子たちが店を引き継いだ。洋子さんは東京で仕事をしていたが、40歳ごろに沖縄に戻り、店を手伝い始めた。「皆に笑顔になってもらい、安くおいしく」という理念を受け継ぎ、地元に愛される店を経営してきた。県外にいる県民から発送を頼まれたり、海外に買って帰ったりする人もいるという。

 最近は体調が優れず、2カ月ほど休んだ時期もあったが、復帰時には「あなたの笑顔を見に来た。頑張ってね」と常連客に励まされた。

 洋子さんは「もう少し皆さんの役に立てたら良かった。母も頑張ったと言ってくれるかな」と話した。

(中村優希)