辺野古新基地建設をめぐる抗告訴訟の控訴審で原告適格を認める判決が出たことに、原告側の意見書を手がけた行政法学者からも歓迎の声が上がった。国の元職員で、原告適格の拡大を認めた行政事件訴訟法改正に携わった都市開発研究所主席研究員の福井秀夫氏は、「司法にもまだ良識が残っていた」と述べた。
「最近の司法には期待していなかった。行政寄りの判決の流れがあったところ、司法にも良識を遺憾なく発揮する法廷が残っていたと、よい意味で驚いている」。本紙の電話取材に応じた福井氏は15日、こう驚きを口にした。
訴訟では、住民4人について、裁判所の審理対象となる原告としての適格性を認めるかどうかが焦点とされてきた。
福井氏によると、現在の原告適格理論は、私人にだけ不利で行政に有利に作用する理論で、先進国の中で、違法の判断にすら入らず、原告適格で不毛な争いが繰り返される国は日本や韓国、台湾しかないという。母国のドイツでは既に日本流の私人を蹴散らす議論は消滅し、アメリカでは行政の違法は民事訴訟で争う。「日本では専門家でも難渋するさまつな論点について、膨大な手間と時間をかけて大議論せざるを得ないこと自体が司法の後進性を象徴している」と指摘した。
また、判決では埋め立て承認がもたらす住民への影響について、騒音コンターの及ぶ範囲で形式的に切り捨てないないなど、健康、環境などに実質的に重大な影響を及ぼすなら原告適格を有するものと位置付けていることに「健全な結論」と評価する。
国が辺野古新基地建設を進める根拠とする公有水面埋立承認を争う資格について、「実質的に住民にもたらす影響、効果が大事だという点をはっきり書いている。承認撤回の理由とされた要件だけが原告適格を基礎付けるとの荒唐無稽な議論を退けた点でも非常に鋭く優れた判決だと思う」と話した。
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【識者】司法に良識残る よい意味で驚き 都市開発研・福井主席研究員
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琉球新報朝刊
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