ホホジロザメ生まれてすぐ「一皮むける」 沖縄美ら島財団が学術誌に論文 謎の白い膜は皮膚


ホホジロザメ生まれてすぐ「一皮むける」 沖縄美ら島財団が学術誌に論文 謎の白い膜は皮膚 調査したネズミザメの胎児(沖縄美ら島財団提供)
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 【本部】ホホジロザメは生まれたあとに「一皮むける」という、新たな学説が国際的な学術誌に掲載された。沖縄美ら島財団の研究チームはこのほど、生まれたばかりのホホジロザメの子を覆う「謎の白い膜」の正体が皮膚であることを突き止め、28日に国際学術誌「Environmental Biology of Fishes(魚類に関する環境生物学)」に、論文として発表した。同チームは「謎多きホホジロザメの繁殖生態に新たな知見を与えるものだ」としている。

 ホホジロザメは映画「ジョーズ」のモデルになったといわれ、大人は最大5メートルほどで、魚を食べるサメとしては最大の種類。ただ、その生態は明らかになっていない部分が多かった。

 そのため、2023年に米カリフォルニアで、ドローンによって、世界で初めてホホジロザメの新生児が撮影された際は、大きなニュースにもなった。

 目撃された新生児の体は白い膜で覆われていたことから、専門家の間で、膜の正体が議論となってきた。当初は、羊水の成分(子宮ミルク)が、胎児の皮膚にこびりついたものだと考えられていたという。

(上)調査したネズミザメの胎児(沖縄美ら島財団提供)(下)ネズミザメの胎児の拡大写真。表皮を1枚はがすと、下からうろこに覆われた本来の表皮が現れる(沖縄美ら島財団提供)

 同財団の研究チームは、ホホジロザメの近縁種であるネズミザメの胎児を調査。胎児の皮膚構造を調べたところ、本来は体表面を覆っている「うろこ」の外側に、もう一層、表皮があることが分かった。調査結果から、ホホジロザメの新生児の白い膜は、皮膚そのものであることを突き止めた。外側の表皮はすぐに剝離すると考えられるため、生まれた直後に「一皮むける」と結論づけている。

 研究チームの中心となった冨田武照さんは「研究によってホホジロザメの新生児を見分けるすべが確立されたことになる」と述べ、保護や保全計画の策定に役立っていくとの見解を示した。(池田哲平)