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物価高騰で困窮に拍車 食料配布にもしわ寄せ<1票への思い 暮らしの現場から 沖縄県議選2024>1


物価高騰で困窮に拍車 食料配布にもしわ寄せ<1票への思い 暮らしの現場から 沖縄県議選2024>1 ゆいまーる会などが困窮者支援のために配布する食料を選ぶ人たち=4日、那覇市の牧志公園
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 ジュースかお菓子か。両方をねだる子どもにどちらか一つを選ばせる。以前はどちらも買ってあげることができたのに―。

 中学生から高校生の子ども5人を1人で育てる那覇市の30代の女性は、ため息をついた。10年ほど前に離婚し居酒屋で清掃のパートなどをしながら暮らしをつないできたが、2023年10月に自身の病気が悪化して働けなくなった。そこに物価高の影響が直撃。生活は困窮を極め、生活保護の支給が始まるまでの約2カ月は妹からお金を借りてしのいだ。

 物価は上がっても生活保護の支給額は据え置き。年頃の娘たちは新しい洋服を欲しがるものの、お下がりなどで我慢させている。生活保護を抜け出すためにパートを再開したが、給料が上がる見込みはない。「給料も増えないと生活できない。子どもが欲しがるものを、いつかは『全部買っていいよ』って言ってあげたい」

 物価高騰で県民生活は大きな打撃を受ける。中でも、ひとり親家庭や高齢単身世帯への影響は深刻だ。16日投開票の県議選では、多くの立候補者が貧困解消や物価高騰対策を重要政策に掲げる。玉城県政が取り組む子育て支援や貧困対策の評価は、選挙の大きな争点の一つだ。


 梅雨の晴れ間が広がった那覇市の牧志公園。食料配布を待つ人々の視線の先で、食パンやカップ麺、缶詰などが次々と並べられる。食料配布は生活困窮者を支援するゆいまーるの会(嘉手苅直美代表)が主に担っている。物価高騰によるしわ寄せは、支援の現場にも現れている。

 「以前はもっと買えたのに」。同会の大山盛嗣さん(47)は、食料を入れた特大レジ袋を抱えて現れたが、予算の範囲内で買えるものが少なくなったことにがく然とした。

 「暑いけどクーラーが使えんわけよ」。つえを突いて歩きながら話しかけてきたのは、那覇市内に住む85歳の女性だ。病気で車いすを使うようになりエレベーター付きのアパートに1人で暮らす。年金は7万円の家賃に消える。少しでも光熱費を抑えようと、家ではテレビを消してラジオを聞き、エアコンも使わない。食費に使えるのはわずかな額だ。「ここで食料がもらえるのは、ありがたいさぁ」。食パンを抱えて公園を後にした。

 配布日にはいつも80~100人が集まるが、現場を訪れた政治家はわずか数人。関心の低さが気になるが、現場を見てもらったのを機に、県が初めて高齢者の生活困窮調査に乗り出したことには希望も抱く。

 大山さんは「本来は行政がしっかり取り組むべき問題。行政の支援からこぼれる人をボランティアが支えるというのがあるべき姿ではないか」と訴えた。

(嶋岡すみれ、慶田城七瀬)

 県議選が7日、告示された。貧困や基地問題、教員不足など、沖縄社会には多くの課題がある。暮らしの現場を見つめ、1票に託す思いを聞いた。