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続く先島の軍備強化 石垣市区は無投票 住民の声届けられず、落胆も<1票への思い 暮らしの現場から 沖縄県議選2024>3


続く先島の軍備強化 石垣市区は無投票 住民の声届けられず、落胆も<1票への思い 暮らしの現場から 沖縄県議選2024>3 開設から1年が経過した現在も新たな施設の工事が進む石垣駐屯地=4月30日、石垣市
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 宮古島の南側に位置し、サトウキビ畑や海岸線から心地よい風が吹き抜ける、のどかな保良集落。数百メートル離れた場所には陸上自衛隊宮古島駐屯地(市上野野原)の保良訓練場が整備されている。防衛省は奄美、沖縄への部隊新編、移駐により「南西シフト」を進めてきた。

 2016年に陸上自衛隊としては先島地方で初となる与那国島に駐屯地を開設し、19年の宮古島、奄美大島と続いた。先島地方で自衛隊配備が進む中、県議選で無投票が決まった石垣市区の住民からは、意思表示の場を失ったことに落胆する声も聞こえた。

 19年、宮古島駐屯地に警備隊が編成された後、その機能は強化され続けている。21年4月に開設した保良訓練場には弾薬庫2棟がすでに整備されており、23年3月には屋内で射撃訓練ができる覆道式射場が完成した。

 宮古島市の50代男性は「海洋国家として発展を目指し、軍事力を強化する中国に不安を感じる市民は多い」と自衛隊配備の必要性を強調する。その上で「自衛隊がいなければ『この地域は国に見捨てられた』と市民はパニックになる」と語る。
   
 陸上自衛隊石垣駐屯地が開設した23年3月16日。吉田圭(よし)秀(ひで)陸上幕僚長(当時)は、防衛省内であった記者会見で「南西地域の空白を埋めることが完了した」と明言した。防衛省が南西諸島で進めてきた、部隊の「空白地域」を解消するための最後のピースがはまったことを意味していた。


 開設から1年余り経過した現在、石垣駐屯地周辺では重機が地面を掘り起こすなど、新たな施設の工事が続いている。

 駐屯地開設前から工事の様子を撮影し続けている、上原正(まさ)光(みつ)さん(71)は「国は住民の暮らしや地方自治をないがしろにしている」と憤る。

 うるま市では陸自訓練場整備計画に多くの人が反対の声を上げ、県議会も計画の「白紙撤回」を求める意見書を全会一致で可決し、防衛省は計画を断念した。上原さんは一人一人が意思表示をする大切さ、政治の重要さをより実感した。

 ただ今回の県議選で、石垣市区は県内で唯一の無投票となった。住民は候補者の論戦を聞く機会が減り、県議選への関心も広がりを欠いた。「政治にそっぽを向いている人が多い。日常的に島のことを考える人が増えないと」。上原さんは声を落とした。そして、願いを語った。「県議など多くの人が沖縄島と同じように、先島の自衛隊増強のことも考えてほしい」

(友寄開、照屋大哲)