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沖縄戦の恐怖、ダンスで表現 糸満のガマ訪れ学ぶ 首里高、全国大会で披露へ


沖縄戦の恐怖、ダンスで表現 糸満のガマ訪れ学ぶ 首里高、全国大会で披露へ 南部撤退で追い込まれ摩文仁の崖から海に飛び降りる住民を表現した場面=1月27日、嘉手納町のかでな文化センター(県女子体育連盟提供)
この記事を書いた人 Avatar photo 中村 優希

 首里高校ダンス部が、沖縄戦を表現した作品「刻~12万人の命をのせて」で、8月に神戸市で開催される全国大会「第36回全日本高校・大学ダンスフェスティバル」に挑む。

 継承のバトンを受け取った若い世代が、それぞれのやり方で沖縄戦や命の尊さを伝える。部長の横山咲那(さな)さん(17)は「戦争体験者が少なくなる中、ダンスを通して恐ろしさや悲惨さを伝えたい」と話す。

 作品は、1月に嘉手納町で実施された「2023年度県学校ダンスフェスティバル」で最優秀賞を受賞。振りや選曲、衣装など全て部員で意見を出し合って構成した。副部長の髙橋菜々子さん(17)は「沖縄戦はそう簡単に扱える題材ではない。当時の人たちに失礼のないようにと考えながら作った」と語る。

 ダンスは平穏な日常の場面から始まり、サイレンで笑顔から恐怖の表情に変わる。住民が兵隊に追い詰められる象徴的な場面を描いた。中盤では圧倒的兵力の米軍と、追いやられる日本軍の戦闘の様子に加えて、戦いに巻き込まれ逃げ惑う住民を表現した。

 特に力を入れたのは、摩文仁の丘を表現した場面だ。「南部撤退で南に追い詰められたイメージ」(髙橋さん)として、1人を複数人で持ち上げ、崖に立つ住民を表した。追い込まれ、崖から海に飛び降りる様子を描く。

 ラストシーンは戦争から時間が経過した現代。赤ちゃんを抱えた母親の背後に、沖縄戦の体験者らが顔を並べる。先人から現代の人に向けて「戦争の出来事を忘れてほしくない」とのメッセージを込めた。

 県大会後、部員全員で糸満市の県平和祈念資料館や同市真壁のアンティラガマを訪れ、改めて沖縄戦を学んだ。これを受けて構成を変更し、全国大会ではガマに逃げ込む人々の描写なども新たに追加する予定だ。

 全国大会に向けて、横山さんは「県外の人にも沖縄戦の悲惨さが伝わってほしい」と意気込む。作品は同校ダンス部のインスタグラムで見られる。全国大会に向けた資金造成のため、ウェブサイト「yellz」でクラウドファンディングを実施している。

(中村優希)