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【深掘り】米兵性的暴行続発 「非公表」の波紋 県警「被害者保護」 沖縄県「再発防止対策できた」


【深掘り】米兵性的暴行続発 「非公表」の波紋 県警「被害者保護」 沖縄県「再発防止対策できた」 沖縄県庁(資料写真)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 相次いで発覚した米兵による性犯罪事件を巡り、発生時や起訴時に捜査機関による報道発表がなく、県にも情報共有されなかったことが波紋を広げている。県警や那覇地検は、性犯罪事件発覚後に第三者が被害者を責める「セカンドレイプ」などを背景に、「被害者のプライバシー保護」を非公表の理由として重ねる。ただ少女誘拐暴行事件が表に出ない間に、別の米兵による女性暴行事件が発生していたことが明らかになった。捜査機関などによる非公表が再発防止の“芽”を摘んだとの批判が強まっている。 

 公表「個別の判断」

 県警捜査1課によると、米軍関係者の逮捕事案に関して、通常は報道発表に合わせて県など関係機関と情報共有するが、報道発表しない事案は通知していない。報道発表の明確な基準はなく、公益性や捜査への影響、被害者らのプライバシー保護などを鑑みた「個別具体の判断」という。

 元々容疑者が米軍関係者であるかどうかにかかわらず、性犯罪事案は報道発表されない傾向にある。セカンドレイプはもとより、「被害者が特定されない形で報道されても、被害者自身には分かる。精神的な負担は大きい」(県警関係者)ことも要因とみられる。結果として、県民の関心も高い米兵による性犯罪事案が、県とも情報共有されにくくなっているのが現状だ。

 一方で、県警は県議会米軍基地関係特別委員会でおよそ3カ月に1回の頻度で広報していない案件も含めて概要を報告しており、そこで事案を県民と共有しているとの認識を示す。

 地検も報道発表について「個別の事案ごとに判断」とし、関係機関との情報共有については、そもそも捜査公判を担う組織だとして「基本的に関係機関で適切に対応すべき事柄だと認識している」と距離を置く。

 「野放し」

 「野放しの状態だからこの(5月の)事件が起こった」。28日に県警に抗議要請した辺野古新基地をつくらせないオール沖縄会議のメンバーは、そう唇をかんだ。

 昨年12月に発生した空軍兵の少女誘拐暴行事件が県と情報共有されないまま、今年5月には海兵隊員による不同意性交致傷事件が発生。玉城デニー知事は同日の会見で「情報が先に提出されていれば米側や国に対してしっかり申し入れし、われわれとしてもそのような被害が発生することのないようにと認識できたと思う」と述べた。

 今回の事態を受け玉城知事は、政府や捜査機関を含めた情報共有体制の構築に言及した。これに対し県警幹部は、被害者のプライバシー保護との兼ね合いの難しさもあるとしながら「情報共有の在り方は考えていかないといけない」と語った。