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米兵事件、新型戦闘機、降下訓練… 嘉手納基地周辺、住民の怒り、不安増すばかり


米兵事件、新型戦闘機、降下訓練… 嘉手納基地周辺、住民の怒り、不安増すばかり パラシュート降下訓練で米軍機から飛び降りる兵士=8日午後7時28分、米軍嘉手納基地上空(ジャン松元撮影)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 【中部】県や周辺自治体が中止を求めている米軍嘉手納基地でのパラシュート降下訓練が8日夜、強行された。昨年12月から5カ月連続で行われた後、天候不良のため中止が続き、米兵による性的暴行事件が相次ぐ中での再開。本紙の目視で36人の兵士の降下を確認した。政府の掲げる基地負担の軽減とは裏腹に増え続ける住民負担に、地域からは怒りや不安の声が上がっている。

  嘉手納基地の滑走路付近に住宅地が隣接し、日ごろから米軍機の激しい騒音にさらされている北谷町砂辺区の照屋博一自治会長(61)は「基地外に外れることもあるし不安」と、降下訓練の固定化に懸念を示した。「砂辺区は普段の生活の中で爆音に悩まされており、新型のF15EX戦闘機配備でさらに騒音が増えると言われているし、先々、住民の不安は増すばかりだと思う」とする。日本政府が掲げる「沖縄の基地負担の軽減」に対し「現実は逆行している」と指摘した。

 北谷町の渡久地政志町長は「明らかな常態化だ。国は基地の負担軽減と言っているが、実感できていない」と述べた。米兵による性的暴行事件が最近になって相次いで発覚したことや、6月に新たに無人偵察機が一時配備されたことに触れ、「米軍は人権を踏みにじり、県民を傷つける。これが基地への不信感の根元にある」と積み重なる負担に憤った。

 降下訓練の計画は8日午前に沖縄防衛局から伝えられた。米兵による事件の伝達遅れも指摘し、「情報共有の在り方も考えてほしい」と求めた。

 嘉手納町役場の屋上で降下訓練の実施を確認した同町議会の仲村渠兼栄議長は、降下する兵士を見て「飛んじゃったね」とこぼした。同議会はこれまで何度も中止を求める意見書を米軍や沖縄防衛局に提出してきた。「一番怖いのは住民の諦めだ」と声が届かない状況に懸念を示した。

(金盛文香、石井恭子)