県民の暮らしを脅かす事件・事故を頻発させる米軍と、有効な再発防止策を打ち出せない政府に、多くの県民が怒りの声を上げた米兵少女誘拐暴行事件。12日に那覇地裁で行われた初公判で、被告の米兵は無罪を主張した。一方で少女への性的行為は認めており、今後の公判では、被害少女の年齢を巡る米兵の認識や、性的行為についての同意の有無が争点となりそうだ。
2023年7月の法改正で、米兵が問われている「不同意性交罪」では16歳未満の少女への性的行為は合意の有無を問わず、原則処罰の対象になった。だが、米兵は初公判で少女が「18歳」であると誤信したと主張。今後の公判では、米兵側は年齢を誤信した合理的な根拠を示せるかどうかが焦点となる。
検察側は次回期日で被害少女本人と少女の母親の証人尋問を求め、地裁が認めた。プライバシー保護の措置が取られるとはいえ、公開審理の場に出る重圧は並大抵ではないだろう。
今回の事件は、米兵事件に関する県への情報提供体制の在り方が問われるきっかけにもなった。23年12月に発生した事件は、24年3月に那覇地検が起訴。この時点で地検から法務省、外務省には情報がもたらされたが、県には情報提供されなかった。在日米軍専用施設・区域の約70%を負担する県との情報共有を軽視する政府の姿勢も可視化された。
法廷のやり取りは、少女が事件で受けた痛みとともに沖縄が直面する不条理も浮き彫りにした。この不条理を前に政府は今後、県との向き合い方をどう変えるか、あるいは変えないか。その点も注視する必要がある。
(安里洋輔)