沖縄県西原町の琉球大学構内にある学生寮近くで7月、学生が茂みの中でがさごそと動く謎の生き物を発見し、大学の守衛に通報した。
駆け付けた守衛が生け捕りにしたところ、通常は海岸沿いなどに生息する「ヤシガニ」であることが判明した。
「なぜこんな場所にヤシガニが?」。学内で起きたミステリー小説ばりの不可思議な出来事に、琉球大関係者は一様に首をかしげる。捕獲されたヤシガニは同大の博物館「風樹館」が保護し、飼育・展示している。
風樹館の平良渉助教によると、ヤシガニは分類的にはヤドカリの仲間で、海岸沿いの林や岩場などに生息しているのが一般的だ。海岸の岩場に原野が隣接するなど、生息環境が連続している場合は比較的標高の高い内陸に上ってくることもあるが、琉球大は住宅地に囲まれているほか、周囲には国道や幹線道路が多く走っており「海側から自力でたどり着いたとは考えにくい」という。
状況を踏まえると、学生か近隣住民が飼育していた個体や食用として捕獲した個体が逃げ出した可能性が考えられるという。保護した当初はだいぶ弱っていたが、平良助教がアダンの実やドッグフードを与えるなどしたところ、元気を取り戻し、夜間には盛んに動く様子も見られるという。
発見されたのは7月13日。風樹館の公式X(旧ツイッター)でヤシガニを保護したことなどを発信したところ学内で話題になり、7月17日に展示を始めて以降、見学に来る人が増えているという。
平良助教は「野生生物を本来の生息地と異なるところで逃がさないよう気を付けてほしい。可能な限り飼育を続けるので、学内外の多くの人に見に来てほしい。また『迷いヤシガニ』に心当たりがある人は連絡をしてほしい」と呼びかけている。