有料

那覇市、救急搬送にDX 2025年度に前倒し導入も「数十秒の短縮が生存確率上げる」 実証実験で効果確認 沖縄


那覇市、救急搬送にDX 2025年度に前倒し導入も「数十秒の短縮が生存確率上げる」 実証実験で効果確認 沖縄 救急車内で端末を使った搬送業務を検証する救急隊員ら=5月、那覇市銘苅
この記事を書いた人 Avatar photo 嘉陽 拓也

 那覇市消防局は2025年度から、救急搬送時に専用端末を用いて病院と患者情報を共有し、処置までの時間を短縮するなど、DX(デジタルトランスフォーメーション)を活用した運用を検討していることが15日、分かった。今年4~5月の実証実験で有用性を確認したほか、救急搬送の増加が止まらない現状を受けて当初予定の26年度から前倒しする予定。市議会9月定例会で予算案が可決されれば整備を始める。

 実証実験では、患者の免許証やお薬手帳を専用端末で読み込むほか、音声で入力した症状を搬送先の病院と共有することで、業務の効率化を確認した。

 期間中にDXを活用した1680件の搬送では、現場滞在時間が昨年より平均約30秒短縮された。病院側では症状を事前に把握することで迅速化な処置につながるため、好評だったという。

 検証作業では、複数の病院に搬送を交渉する事例で現場滞在時間と交渉時間がそれぞれ約3分短縮されたほか、心筋梗塞の事例ではそれぞれ約1分短縮できた。同局救急課の大城幸也主幹は「数十秒や1分の短縮が生存確率を上げる。隊員の習熟度が上がればより早く搬送できる」と語る。

 那覇消防の出動件数は右肩上がりで、今年1月から7月末までに1万4509件(速報値)となり前年同期比1051件増だった。6月末以降は1日百件を超える日もあるという。

 出動回数に比例して報告書作成の負担も増すが、DX化により入力時間は約12分から約3分まで減少するという。救急隊員全63人で換算すると年間約3555時間の減少となるため、救急係の金城琢也さん「労務管理の適正化だけでなく、訓練時間の確保でより良い市民サービスにつなげていきたい」と語った。

 (嘉陽拓也)