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「知事の意見そんなに軽いのか」 辺野古大浦湾くい打ち着工 住民に悔しさ、脱力感 沖縄


「知事の意見そんなに軽いのか」 辺野古大浦湾くい打ち着工 住民に悔しさ、脱力感 沖縄 海中にくいを打ち込む作業船を横目に海遊びする子どもたち=20日午後3時50分、名護市大浦区
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 20日午前9時40分ごろ、大浦湾に面する名護市の大浦区には灰色の雲がかかり、時折、小雨が降っていた。同区を通る国道331号から大浦湾を眺めると護岸造成工事に使われるクレーン船や台船が数隻、薄い霧に包まれながら、ただ静かに浮かんでいた。

 午前10時半ごろ、大浦区では人の行き交いは少なく、米軍の砲弾によるものとみられる破裂音だけが鳴り響いていた。同区の共同売店で店番をしていた大城光正さん(69)は「戦争につながることは反対だが、ここまで来たら基地ができた後のことを考えるのも地域のためではないか」と悩ましい表情で語った。「(破裂音にも)演習の音にも慣れた。いずれ大浦の工事も慣れてしまうのかね」と大城さんが話す中、パンパンと破裂音が響いた。

 大浦区に隣接する瀬嵩区の海岸からは湾内の台船がよりはっきり見えていた。公民館で草刈りをしていた同区の西平伸区長(66)は工事が始まることについて「知事の意見はそんなに軽いのか。もう止まらないんだろうなという気はしているが」と悔しさを吐露した。約20年間、大浦湾の生き物を観察していた西平さん。基地建設について「最初のころははがゆい思いで見て、わじわじしたけど。だんだんと工事が進む海が日常のようになっていった」と悲しげな目で話した。

市民らによる抗議活動が行われた米軍キャンプ・シュワブのゲート前=20日、名護市辺野古

 正午ごろ、晴れ間がのぞいた瀬嵩の浜では、日の光を反射して輝く海を背景に20代の女性2人が写真を撮っていた。2人は、今日、この海を埋め立てるための工事が始まるとは知らなかったと驚いた様子を見せた。「埋め立てられるのはいやだよね。生き物がいなくなるのはさみしい」と顔を見合わせ、海に浮く作業船を見つめた。

 辺野古区の通りは普段と変わらない街並みが続いていた。

 辺野古公民館では、区民らが今週末に開かれる大綱引き大会の準備に追われていた。公民館のベンチで一息ついていた島袋茂区長によると、区にも工事再開の連絡は来ていたという。「すでに埋め立てが始まっている中で(工事の)再開に驚きはない。今更反対して何が変わるのか」と淡々と語った。一方、同区の50代女性は貴重な自然を破壊して軍事的に利用する政府のやり方を非難した。「民意を無視し、サンゴを殺す工事はすぐにやめて」と語気を強めた。

(金城大樹、玉寄光太)


<本体工事着手ドキュメント>

午前9時20分 米軍キャンプ・シュワブの搬入ゲートで、抗議の市民らが座り込む中、土砂を積んだ車両が基地内へと次々と入る

午前9時27分 雨が降る中、工事海域周辺で、市民らが抗議活動を展開する。カヌー4隻がフロート内に進入し、海上保安庁に制止される。関連船舶で作業員が準備する様子が見られる

午前10時42分 市民らが再びカヌーに乗ってフロートを超え、クレーン船を目がけてこぎ始める。海上保安庁に確保された後「この海に戦争はもういらない」と叫ぶ人も

午前11時30分すぎ キャンプ・シュワブの搬入ゲートで、2度目の土砂運搬が始まる。「違法工事中止せよ」などとプラカードを掲げた市民らが声を上げて抗議

午後1時18分ごろ 作業が始まる。黒い排気を上げながらクレーンが動きだし、金属製のくいをつり下げ、同28分に海中へ投下

午後2時ごろ 海中へ投下した、くいの打ち込みと石材の投下作業が始まる。クレーンは小刻みに揺れながらくいを海中へ押し込む。1本目のくい打ちは、同48分ごろまで続く

午後3時25分ごろ 2本目のくいが海中へ投下され打ち込みが始まる

午後4時20分ごろ 金属のような機材が投下される

午後4時25分ごろ クレーンが畳まれ、作業が終了