本島北部の米軍北部訓練場の返還地で、返還後も大量の米軍廃棄物が見つかっている問題で、岸田政権が「返還地全域で調査等を行う予定はない」とする答弁書を閣議決定していたことが分かった。原状回復措置の徹底を目指した跡地利用推進特別措置法(跡地法)の趣旨に反した現状を正当化する内容で、他の返還地への影響も懸念する声が出ている。
北部訓練場は約4千ヘクタールが部分返還されたが、沖縄防衛局の廃棄物撤去は約5ヘクタール(全体の0・1%)にとどまった。このため、2017年12月の引き渡し後に米軍廃棄物が次々と発覚。国は「廃棄物調査等業務」として、空包類や大型鉄板などの回収を続けている。
答弁書は5月7日付。屋良朝博衆院議員(立民)が提出した質問主意書に答えた。
政府は答弁書の中で「廃棄物等が存在する蓋然性(がいぜんせい)が高いと考えられる範囲で支障除去措置を実施した」と説明。その上で、現在行っている廃棄物調査等業務についても「全域で行う予定はない」とした。
日米両政府は23年、ユネスコの世界自然遺産に登録された本島北部の自然環境保全に向けて取り組む共同声明を出している。
屋良氏は「北部訓練場のようなやり方をしていたら、今後の嘉手納以南の返還でも国が責任を取らなくなる」と問題を指摘した。
県内の環境調査団体インフォームド・パブリック・プロジェクト(IPP)の河村雅美代表は「自然を守りながらの調査が難しい北部訓練場の特殊性はあるが、2012年の跡地法改正では全部調査することになった。国の説明責任や県による監視態勢が必要だ」と語った。
(南彰)