本島北部にある米軍北部訓練場の返還跡地の支障除去を巡り、沖縄防衛局が跡地の返還・引き渡しに向けて調査を進めていた2017年当時、跡地で確認された米軍廃棄物の存在について、県が防衛局から説明を受けていたことが当時の記録から明らかになった。訓練場跡地のあるやんばる地域の世界自然遺産登録に向けて、国が推薦への作業を進めていた時期でもあった。専門家は「土地の引き渡し前に県が国から説明を受けて廃棄物の存在を把握しながら公表せず、遺産登録を急ぐため、撤去を求めなかったのではないか」と問題視している。
国と県の一連のやりとりは、調査団体「インフォームド・パブリック・プロジェクト(IPP)」の河村雅美代表が県に情報開示請求した関連文書で判明した。
跡地利用特措法では、駐留軍用地の返還・引き渡しについて、廃棄物や土壌汚染など支障除去の完了後に土地の所有者に引き渡すことを定めている。河村さんは「ステークホルダー(利害関係者)でもある県が廃棄物の存在を把握しながら、支障除去を求める姿勢が見られない」と指摘した。
返還跡地は、17年12月に土地所有者の沖縄森林管理署に引き渡されたが、その直後にヘリコプター着陸帯「FBJ」跡地付近で、チョウ類研究者の宮城秋乃さんがライナープレート(防護壁)や鉄板などの廃棄物を発見。国は2021年までに鉄板など14・7トン、263枚の撤去を終えた。
県は、跡地の支障除去について「国の責任で措置されるもの」との認識を示すにとどめている。23年10月には県の担当課の職員が宮城さんの案内で現場確認を行った。1月18日の知事会見で県企画部は「防衛省や森林管理署ともさまざまな情報共有はできていると思っている」と述べた。
また、世界自然遺産登録との関連について県環境部は「当時、世界自然遺産区域に北部訓練場の返還予定地が含まれておらず、登録そのものに影響はなかった」とした。
北部訓練場跡地を巡っては、今も次々と廃棄物が見つかっており、国が「調査業務」として廃棄物処理を続けている実態がある。防衛局のまとめでは、16年の返還以降空包5万発のほか照明弾や実弾も見つかり、処理費用は7億円を超えた。
(慶田城七瀬)