米兵女性暴行事件で、県警は米軍管理下にある米兵の身柄引き渡しを求めず、米軍の協力の下で任意聴取し、那覇地検に書類送致した。「米軍側と連携を取りながら取り調べができていた」(県警幹部)と説明する。今回の件を含め、近年は身柄引き渡しを求めず、米軍側の協力を得て捜査の進展を優先する傾向にある。
だが米軍側に裁量がある状況に変わりはなく、県警関係者からは「身柄を取れないことで捜査に支障をきたした事例もある」と懸念を示す声も上がる。
日米地位協定では、公務外で犯罪を行った米軍人・軍属の身柄が基地内にある場合、日本側が起訴するまで身柄は米軍が拘束すると定める。
一方、1995年の少女暴行事件を契機に「殺人、強姦という凶悪な犯罪」では、起訴前の身柄引き渡しについて米側が「好意的な考慮を払う」ことで合意した。強制力はない一方で、これまでに全国で6件(県内3件)の事件で要請され、5件(同2件)で引き渡された。
ただ、近年は身柄引き渡しを求めない傾向がある。
昨年12月に発生した米兵少女誘拐暴行事件も今回の事件と同様に容疑者が米軍管理下に置かれたが、県警が身柄引き渡しを求めずに、米軍捜査機関の協力を得て任意で事情聴取を進めた。
県警関係者は「米軍側は基本的に県警の要請に協力する。特に沖縄では、県民世論を考慮している印象だ」と語る。
別の関係者は米軍内での管理は厳格だとの認識を示し「留置面でも無理に身柄引き渡しを求める必要はない」と説明する。
一方で、ある元県警幹部は、米軍側が協力要請に応じなかったり、情報共有の不備から起訴前に容疑者が米国に帰国したりしたケースもあったと指摘する。その上で「(米軍に裁量がある)状況の改善のために地位協定を変える必要があるのではないか」と強調した。