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【識者談話】軍の「犯罪抑止力」喪失か 米軍刑法犯、過去10年で最多 前泊博盛氏(沖国大教授)


【識者談話】軍の「犯罪抑止力」喪失か 米軍刑法犯、過去10年で最多 前泊博盛氏(沖国大教授) 前泊博盛氏
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 2022年から米軍関係者の刑法犯の摘発件数が増加傾向にあるのは、米軍が軍内の犯罪抑止力を失ってきたことの証左だろう。県内で、新型コロナの感染拡大が米軍基地から広がっていったように、米軍内で広がる犯罪傾向が基地外にあふれ出してきている状況だ。

 6月以降、米兵が絡む性犯罪事件の発覚が相次いでいるが、直近3年で米軍内での性犯罪被害が増えていることが米国防総省の統計からも明らかになっている。

 統計によると、米軍内の性犯罪被害は、8500~9千件近くに達しているという。

 ただ、被害を申告している被害者は全体の4分の1にとどまるとされており、軍内で年間4万件近い性犯罪が発生している可能性がある。

 イラク戦争を契機に、米軍の志願者が減り、入隊条件を緩和したことの影響もある。入隊者の中に、犯歴があるなど犯罪性向が進んでいる者が多く紛れ込んでくるようになった。その一方で、退役による人員流出を防ぐために軍内の規律も緩くなってもいる。

 米軍が、綱紀粛正を図ろうにも図れない状態に陥っている。

 在日米軍についていえば、「台湾有事」を念頭に置いた自衛隊との連携強化で訓練はより実戦的に、より過酷なものになりつつある。緊張状態が続くことによるストレスの増大が、米兵による犯罪の増加につながっている可能性があることは否定できない。

 (安全保障論)