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「腎移植」受け得た自由 24年続いた透析、ドナーに感謝 野嵩さん「当たり前の選択肢に」 沖縄


「腎移植」受け得た自由 24年続いた透析、ドナーに感謝 野嵩さん「当たり前の選択肢に」 沖縄 街頭でティッシュを配り、臓器移植の意思表示を呼びかけた県腎臓病協議会の野嵩正恒会長=5日、那覇市のパレットくもじ前交通広場ウフルーフ
この記事を書いた人 Avatar photo 中村 優希

 10月は臓器移植普及推進月間。全国で臓器移植を希望する人のうち、実際に移植を受けられるのは3%程度といい、移植医療の普及・啓発が課題となっている。県腎臓病協議会会長の野嵩正恒(まさつね)さん(49)は、脳死または心肺停止後の人から腎臓の提供を受ける「献腎移植」を受けた当事者でもあり「臓器提供の意思表示を考えよう」と呼びかけている。 

 中学3年の頃、学校の検尿がきっかけで慢性的な腎臓の病気「IgA腎症」であることが分かり、通院を始めた。症状は、ほおが膨らむなど顔がむくむ程度で日常生活では腎臓の異常に気づかなかったという。

 20歳の時、検査で50%だった腎機能を表す数値が15%まで低下したことが分かり、レシピエント(移植患者)に登録した。そこから人工透析治療が始まった。週に3日、長時間の治療が、ドナーが見つかるまでの24年間続いた。治療後、時間がたつと体がだるくなるなど体調が不安定で、仕事の集中力を保つのにも苦労した。食事制限にも縛られ、たくさんの料理をほおばる夢を見たこともある。

 ドナーが見つかったのは2019年。県外在住者の腎臓を移植できると連絡が入り、その日の夕方には移植手術を実施、無事成功した。手術後、24年ぶりに自力で尿を出すことができ「とても安心感があった」と振り返る。

 透析治療がなくなった現在は自由な時間が増え、管理栄養士としてより仕事に励む。「これまで治療に充てていた時間を仕事に使える。おかげで忙しい日々を送っている。ドナーの方には感謝しかない」と語る。

 県によると現在、県内で腎臓移植を希望している人は238人(2023年12月末時点)、角膜移植が29人(24年8月末時点)となっている。

 野嵩さんは「今も移植した腎臓は元気に動いている。これはドナーの臓器移植を提供するという意思表示があったから。意思表示をして、少しでも腎臓移植が県民にとって治療の選択肢として当たり前になるように願っている」と話した。

 (中村優希)