第15旅団が、沖縄戦を指揮した第32軍の牛島満司令官の辞世の句を「歴史的事実を示す資料」と説明し、削除しないことに対し、驚きと憤りを感じていた。削除は当然だと思う。
第32軍の作戦方針は住民の犠牲を飛躍的に拡大させた。「現地物資を活用し、一木一草といえども戦力化すべし」は、モノや人の根こそぎ動員につながった。「軍官民共生共死」で一般住民に捕虜になることを許さない思想で死を強制した。「時間稼ぎ」の南部撤退により、大勢の住民を巻き込むことにつながり、沖縄戦の悲劇を生んだ。
自衛隊の今回の対応は、一応住民に寄り添おうとしているように見えるが、実際にはどうだろうか。日米共同統合演習「キーン・ソード25」では、沖縄を戦場にする想定で訓練が進んでいる。沖縄どころか日本を防波堤にし、小規模な部隊に分かれて南西諸島の島々に散り散りとなり、移動を繰り返して中国軍の攻撃をかわしながら戦闘を繰り返す作戦だという指摘もある。辞世の句の取り下げは表層にすぎない。県民は沖縄を戦場にしないためこの動きを注視し、考えていかなければならないのではないか。 (ひめゆり平和祈念資料館館長)