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【深掘り】揺らぐ工事の正当性 辺野古の軟弱地盤“隠し” 政府、2007年に認識も調査後回し 元知事の「承認」に固執


【深掘り】揺らぐ工事の正当性 辺野古の軟弱地盤“隠し” 政府、2007年に認識も調査後回し 元知事の「承認」に固執 多くの作業船が見える大浦湾。奥は埋め立て工事が進む米軍キャンプ・シュワブ沿岸=9月26日午後、名護市瀬嵩(小川昌宏撮影)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 名護市辺野古の新基地建設を巡り、沖縄防衛局が軟弱な地層があるために大浦湾側の追加調査が必要だと2007年に認識していたことが明らかになった。政府側は13年の埋め立て承認申請前から軟弱地盤の存在を知り得たにもかかわらず、調査を後回しにして申請をしたことになる。調査不足は後に工期、総事業費の大幅増を招く結果となり、県側は「最初から9300億円、共用まで12年かかると分かっていたら、本当に辺野古が移設先に選ばれただろうか」と、事業の妥当性が問われる事態に不信感を募らせる。

二度の機会

 共同通信が入手した2007年の報告書で、調査の必要性が明記されていたことが発覚した。

 琉球新報のこれまでの取材で、1997年に大浦湾で政府が実施した調査でも軟弱地盤がある可能性を示唆する結果が示されていたことが分かっていた。結果を踏まえて詳しく調べていれば、早い段階で地盤について確認できたはずだ。

 大浦湾側の軟弱地盤は、工事着手前に少なくとも2度、把握できるタイミングがあったことになる。だが、政府は19年に地盤改良の必要性を認めるまで放置してきた。

 防衛局は13年に当時の仲井真弘多知事から得た承認を根拠に工事を続けているが、その正当性が揺らぐ。

 しかし、政府内で重く捉えている節はない。松野博一官房長官は2日の記者会見で「問題があったとは考えていない」と強調した。

 政府関係者の一人は「普通の工事で対応できる軟弱地盤だ。明らかになっていたとしても移設場所が変わるほどの重大な事実ではない」と“後出し”の思惑を否定した。

印象付けも

 政府が大浦湾側の地盤改良の必要性を認めたのは19年。辺野古側への土砂投入を始めた後だ。事業全体の期間や工費も大幅に左右する重大な事実を明確にしないまま、軟弱地盤のない区域から埋め立てを既成事実化し「後戻りできない」という印象付けを図ったとの狙いが浮かび上がる。

 政府が20年に県に提出した地盤改良工事を追加する設計変更申請で、工期は当初想定の5年から約9年3カ月に延長された。米軍が使用する状態になるには12年以上かかるとしている。総事業費も14年に示した3500億円から約2・7倍の9300億円に膨らむなど異例の大規模事業に変貌した。

 県関係者は、防衛局が当初提出した埋め立て承認願書では大浦湾側から着手する計画になっていたにもかかわらず、18年に土砂投入を始めたのは辺野古側だったことに触れ「当時から理由を聞いても丁寧な説明はなかった。法的問題は別にしても、きちんと説明しないのは不誠実だ」と国側の姿勢を疑問視した。

 県は、07年の報告書を提供するよう防衛局に求め、内容を確認した上で対応を検討する。別の関係者は「工事に時間がかかり、埋め立てが承認されない可能性を懸念して軟弱地盤の存在を隠していたようにも映る。当初の埋め立て承認願書の時点で軟弱地盤のことが分かっていたなら、その情報も踏まえて承認の是非を判断する必要があった」と語り、国が工事継続の根拠としている埋め立て承認への影響も必至だった重大事項との認識を示した。

 (知念征尚、明真南斗、與那原采恵)