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【識者評論】移植は「保護・保全」に資さず 辺野古サンゴ訴訟即日結審 大久保奈弥(東京経済大教授)


【識者評論】移植は「保護・保全」に資さず 辺野古サンゴ訴訟即日結審 大久保奈弥(東京経済大教授) 大久保奈弥東京経済大教授
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 農林水産相側による「環境保全措置として移植等の措置をとることは、当該水産動植物の保護・保全に資する」という言い分は間違いだ。水産庁が沖ノ鳥島の国土保全のために植え付けたサンゴの生残率は、4年後で2割程度である。

 沖縄防衛局がこれまでに辺野古から移植した絶滅危惧種のオキナワハマサンゴは、9群体中1群体しか健全に育っておらず、明らかな「移植失敗」である。

 専門家と称する環境監視等委員会は、その死亡原因を「サンゴの寿命」としたが、サンゴの寿命は世界中の誰も知らないし、死ぬ前まで幼生(赤ちゃん)を産み続けた事実がある。過去の知見から推測すれば、ストレスを受けたために子孫を残して死亡したと考えるのが自然だ。

 県側は「サンゴ類の移植・移築が始まれば、もともとの生殖場所のサンゴは皆無になる。移植・移築先のサンゴの生残率も高くはない」と述べた。県が手がけるサンゴ養殖事業で、5年後の生残率が約1割であったことからも正しい言い分である。

 2021年7月、サンゴ移植を巡る最高裁判決は「サンゴ類の移植は極めて困難で、移植を行なっても大半のサンゴ類が死滅することに鑑みれば、サンゴ類の移植は、それ自体としてみれば、サンゴ類に重大かつ不可逆的な被害を生じさせる蓋然(がいぜん)性が高い行為といっても過言ではない」との反対意見を付けた。そこに書かれた事実は今も変わらない。裁判所はこの最高裁判決の反対意見を忘れてはならない。

 現時点では「移植はサンゴ類の保護・保全に資さず」であり、サンゴの生息地である大浦湾を開発しないことが一番の「保護・保全」なのだ。

(サンゴ生物学)