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県「民意は公益」最高裁に考慮求め 国の代執行3要件に反論 上告理由書を読み解く


県「民意は公益」最高裁に考慮求め 国の代執行3要件に反論 上告理由書を読み解く 新基地建設が進む米軍キャンプ・シュワブ付近の沿岸=2024年1月名護市辺野古(小型無人機で大城直也撮影)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 普天間飛行場の移設に伴う新基地建設の設計変更申請承認を巡る代執行訴訟で、県が19日に最高裁へ提出した上告受理申立理由書は、新基地建設に反対する県民の民意を公益として考慮するよう求めている。また、代執行ではなく、県と国との対話による解決を改めて要望した。福岡高裁那覇支部判決が国の請求通りに認めた、代執行の3要件の該当性に反論する県の主張をまとめた。

法令違反要件 「公水法規定 審理せず」

 法令違反などの要件について高裁判決は、国土交通相が県に承認するよう求めた是正の指示を巡る訴訟の最高裁判決(昨年9月4日)を根拠に、県の法令違反を認定した。

 県は、最高裁判決が公有水面埋立法(公水法)の関係規定の法令違反を判断していないと指摘。高裁が最高裁判決の解釈を間違え、「要件の充足性を審理判断しなかった誤りがある」と主張した。

 大田昌秀県政時代での米軍用地を巡る1996年の代理署名訴訟の最高裁判決も参考に、代執行手続きは地方公共団体の処分権限を国が奪う地方自治に対する最終的な介入手段だと指摘。「改めて要件審理では、法令違反などについて具体的な内容審理がなされなければならない」と慎重に判断されるよう求めた。

代執行以外の是正要件 「対話機会持つべきだ」

 高裁判決は、代執行以外の方法で是正することが困難との国側主張を追認し、県が国に求める対話では是正が図られないと判示した。

 この判断について県は「判決の判断は、『対話』は無駄と言わんばかりで、民主的な手続きを軽視している」と反発。埋め立て事業継続の是非も含め「当然に対話による問題解決の機会が持たれるべきだ」と改めて強調した。

 一方、高裁判決が付言で国と県による相互理解に向けた対話による抜本的解決を望んだことについて、「一見矛盾するようだが、司法による国に対する強いメッセージ」と受け止めた。仮に上告審が高裁判決と同じ判断をするのであれば、「(付言は)単なる美辞麗句を並べたにとどまることになる」とけん制した。

公益侵害要件 「県民無視、許されず」

 県は埋め立て事業が沖縄の基地負担の永続化につながるとして、「地方公共団体の住民の意思を無視して行うことは到底許されるべきではない」などと訴えている。

 県が設計変更を承認しないことが公益を侵害するかについて県は、高裁判決が県の法令違反などを放置することによる社会公共の利益の侵害のみが考慮されるべき公益だと示したと指摘。

 普天間飛行場の固定化回避といった国主張の公益だけでなく、承認が県や住民に与える影響、住民の自己決定という公益が考慮されるべきだと求める

 高裁判決は埋め立て事業の必要性を理由に公益性を判断したが、その判断は誤っていると反論した。憲法上の地方自治の保障も踏まえ、県が承認しないことは「地方公共団体の自主性・自立性の尊重にかなう」と述べた。

 また、米軍機騒音訴訟での飛行差し止めの訴えなどを退ける国側が論拠にする米軍基地施設の運用には日本の法の支配が及ばないとした「第三者行為論」を引き合いに、「人権の最後の砦(とりで)たる裁判所が追認し続けてきた論理で、基地被害を固定化し続けてきたのは、裁判所でもある」とくぎを刺した。