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1996年の日米交渉、見せかけの海兵隊削減 防衛省「反対」で合意つぶし


1996年の日米交渉、見せかけの海兵隊削減 防衛省「反対」で合意つぶし
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

1996年当時、防衛局長だった秋山昌広氏は、外務省と在日米軍がまとめた海兵隊兵力削減に関する合意に対して、北朝鮮や中国に「誤ったメッセージ」になるとして反対したことを明かした。秋山氏は「戦争の帰趨(きすう)は陸上兵力で決まる。沖縄に海兵隊の基地があるということは非常に重要だった」と述べた。

この時、日米が合意したのはもともと定員を満たしていなかった海兵隊の実際の人員を示すことで、削減したかのように見せる手法だった。

秋山氏は「実員が2割ぐらい少なかったのを2割削減すると表現すると合意したとの話だった。実際は減らさないのに減らしたようなことを言うのは誤った情報の提供となる。海兵隊の存在が重要と言ってる日本にとっておかしなことになる」と語った。

梶山静六官房長官(当時)から海兵隊削減の議論を米軍とするように命を受け、米軍と交渉したのは田中均外務審議官(同)だった。田中氏から報告を受けた秋山氏は在日米軍幹部と会って反対を伝え、合意を「つぶした」と言う。秋山氏の反対により合意は実行されなかった。

田中氏は2022年4月の日本記者クラブの講演会で「(秋山氏から)反対だと言われたことは事実。やりたかったのは実員ベースで話をしていこうということだ。定員みたいなことで大きく見せる必要はないんだと。だから、実員で話をしようという枠組みを作ろうということだった」と述べた。
  (梅田正覚)